【ユニセックス】ビターなシトラスの香りを探しているならペンハリガンの香りがおすすめ

2021年の夏をともに過ごすのは2本のフレグランスで、両方とも英国のフレグランスメゾン、ペンハリガンのもの。2本ともユニセックスで楽しめます。

f:id:usmilitarybase:20210620020401j:plain

 

1.こんなシトラスカクテルがあったらいいな、と思わせるような香り。 ジ アンジェヌー カズン フローラ オードパルファム(女性用)

柑橘系の爽やかさな香りがとても良い気分転換になる季節になりましたが、爽やかなだけじゃ物足りず、あの独特のビターなきゅっとした香りを纏いたい人におすすめなのが、ペンハリガンのポートレートシリーズの一つであるジ アンジェヌー カズン フローラ オードパルファム。日本語では「純真ないとこ フローラ」。

f:id:usmilitarybase:20210619171639j:plain

日本の蒸し暑い夏につけても香害になる危険性のない香りでもあります。むしろこの湿度の中でも「なんかいい香りがする」と言われることが多いほど。ペンハリガンの商品が販売されているラトリエデパルファンというサイトで、香調にアロマティックシトラス、キーノートにはシトラスカクテルと書かれているのを見て納得の香りです。今週もなんとか乗り切れた・・・と自分をねぎらうために頼んだカクテルがこんな香りだったら、筆者はそのバーに通い続けることでしょう。落ち着く・・・・。失恋など、悲しいことがあった時にもこんな香りのカクテルが寄り添ってくれたらいいなぁ。レディースですが、これはユニセックスでも使える香りだと思いました(チャラい男は使わないでね)。

キャラクター: コマドリ ― “可愛らしさ・愛される存在”

香調: アロマティック シトラス

キーノート: シトラスカクテル/ムスク/アンブロクサン

調香師: クリストフ・レイノー

(以上 ラトリエデパルファンより引用)

ポートレートシリーズに興味を持たれた方もいらっしゃると思うので同メゾンの冊子から引用すると:

香りが語る人間模様。イギリス上流階級の人々の秘密。 個性あふれる登場人物一人ひとりが香りになりました
イギリスの上流階級で、礼儀正しく亭にに振舞う彼らは、その印象通りの人物でしょうか?ペンハリガンのPortraits(ポートレート)は、保守的でありながら、ユーモアにあふれ、挑発的なイギリス人のスピリットにオマージュを捧げるコレクションです。


純真ないとこフローラもこのシリーズの貴族の一人なのですが、純真無垢で天使のように愛らしい少女という設定になっています。ただ双子のマシュー(彼のキャラクターのフレグランスも有り)はフローラちゃんの裏の顔を知っているのです・・・。その裏の顔が、ベースノートのウッディ。吹きかけた瞬間に苦みがあって、少しスモーキーな感じすら鼻をつくような感じのシトラスの香りの秘密は、フローラちゃんの裏の顔でもあるこのウッディなのです。さて、肝心な香りの持続時間ですが、私の肌の上だと2時間くらいでした。
このシリーズは75mlで35,200円と高いです。キャップは真鍮じゃなくてもいいし、箱もこんなに可愛くなくてよいからもう少し安くしてくれないかなぁと思うのですが、ぷしゅっと吹きかけた瞬間に、ペンハリガンのフレグランスメゾンとしてのこだわりを感じ、高くてもしようがないか、と思ったのも事実。
といいますのも、とにかくミストがふわっと細かくて、それが肌に舞い降りる瞬間の心地よさは筆舌に尽くしがたい!世の男性達は女性の肌に触れる時、こういう風に優しく触れるといいですよ、とお手本にしてほしいくらいの優しさです。
ちなみにこのポートレートシリーズの冊子を参考に夫のフレグランスも選んでみましたが、「ジョージ卿の悲劇」(香調:ウッディアンバリーフゼア)が彼のキャラクターにはあっていますね。

 

2.大きなサイズを買えばよかったと後悔しているクァーカス オーデコロン(男性用)

f:id:usmilitarybase:20210620015946j:plain
二本目はクァーカス。ポートレートシリーズよりも安いペンハリガンのレギュラーの香りですが、それでも30mlで11,550円です。メンズの香りが好きな女性、多いと思うんですよ。そういう人達の琴線に触れるかはわかりませんが、筆者はけちって30mlのボトルを買ったことを後悔しています。7月が終わる前に使い切ってしまいそうな勢いで現在この香りを楽しんでいます。8月はどうしたらいいの・・・・。

シトラスとバジルの躍動感あふれるコンビネーションに、ジャスミン、カルダモン、リリー、アンバーをブレンド。モスやパチュリにあたためられた香りは、優雅さと透明感をたたえ、気分を明るく高揚させます。

(ラトリエデパルファンの商品ページより引用)

 

ウェブでクァーカスを検索すると「CK Oneが好きな人なら好きでしょう」というレビューをかなり見かけます。確かに系統はシトラスということで同じですが、CK....と異なる点は、クァーカスの方がとんがっていて大人向け。
例えばCK Oneは、部活の練習を終えた男子高校生が部室で気合を入れてこれでもか!と浴びるようにかけて、向かう先は激しい争奪戦を勝ち抜いて手に入れたとびきり可愛いマネジャーとのデート、と言った香り。シトラス系でも甘さの感じられる、青春の香り。
一方クァーカスは、ビジネスマンがジムでウェイトリフティングをした後、シャワーを浴びてからパンプアップした筋肉にかけてほしいような香り。あるいは長い一日を終え「はぁ・・・バカとは何を話しても平行線のままだな」と疲れ切ってオフィスを出る前に、ロッカールームでクァーカスをひとふきし、疲れといらだちをそこにブレンドさせて「その日の終わり」という名の香りに包まれて、デートに向かってほしい。社会の荒波に少しもまれた男性の方が似合う香り。同じシトラス系でも、ちょっとぴりっとスパイシー。このスパイシーさに惹かれて自分でも身にまといたいと思う女性はかなりいると思います。
既に書いたように筆者はこの商品の30mlを購入しましたが、手軽に持ち運べるサイズのため気分転換にちょうどよいという利点があるのを忘れていました。オフィスのデスクに置いておいて、疲れてきたらスプレーせずともこのボトルの匂いを嗅いですっきりするのです。癒される・・・。

【PENHALIGON'S】 ペンハリガン クァーカス コロン|香水・フレグランス



ペンハリガンにはこんな香りもあります

cantfoolme.hatenablog.com

「逃北」北への偏愛に理由はあった

「人生に疲れたら楽園に逃げ込んで心身ともに休めたい」

この場合楽園=南国のリゾートを思い浮かべる人が多いと思いますが、筆者は絶対に北の方へと逃げたくなります。なぜこんなに北に惹かれるのか・・・能町みね子さんの逃北 つかれたときは北へ逃げます (文春文庫) Kindle版を読んだら、今まで筆者がうまく説明できずにいた感覚が見事に言語化されていました。「逃北」(とうほく)という造語からしてもうがっちり心をつかまれたのです。

こうしてみると、私は総合的に、「寒いところ」「曇ってそうなところ」「雪が降るところ」「日本海側」そして「なんとなくさみしいところ」を「北」として認識してるんじゃないかと思う。そして、さみしいところには「果て」の空気を求めてしまう。この先はない、どんづまり。そこに感じるのは閉塞感よりも、空や海が真っ黒い口を開けている空虚な開放感。それを私は「北」だと思っているようです。

(本文より引用)

Shiozawa station Niigata

もうね、能町さんが目指す「北」は筆者のストライクゾーンのど真ん中です。能町さんも筆者もルーツが北にありますから、DNAレベルで北を求めているというのもあるのかもしれません。
夜の闇の中で暗く浮かび上がる、雪に覆われた田園地帯。その闇の中を電車が駆け抜ける瞬間がまたよいのです。その土地に暮らす人も動物もそろそろ寝静まるであろう時間帯に走っている在来線を見ると、がらがらではありますが、まだこんな時間に(といっても都会に比べたら早い時間帯)活動している人がいるのか、その人はこんなに寒い中、これから帰宅しなくちゃいけないのか、などと余計な心配をしてしまうのです。

これも能町さんが書かれていました!「北に暮らす人達は『ここは何もないよ』というけど、自分は観光地を目指しているわけではないので十分楽しい」というようなことを。そうなのです。例えば青森に行ったからと言って「恐山を目指そう!」とは思わない。もう「青森に来た」というだけでかなり満たされてしまうのは、そこにちゃんと「北」の風土が感じられるから。地元の人達からすると何もないのでしょう。でも北を求めてきた人間からすると、もうそれが贅沢なのです。私なんて実家に帰省した時に録画した北風が吹き晒す裏庭の動画、今でも時々見ては、聴いているだけで寒さが伝わる北風の音を楽しんでいます。北風の音は寂しい。

ところで「北」とはどこなのか。私はどの範囲を「北」ととらえているのか。これは本当に感覚的な問題。私が北だと思うところは来たです。「北っぽい」と感じるところであれば、十分に逃北できます。北緯何度から線を引いてここから上ですってわけにはいかない。

(本文より引用)

というわけで、能町さんが「北っぽい」と感じる地域をあらわした図が描かれていたのですが、島根・鳥取の山陰2県も含まれていました。西日本じゃないか!とつっこまないでくださいね。能町さんが「北っぽい」と感じれば逃北先になります。「寂しさこそ観光資源」と能町さんは書かれていますが、島根、鳥取は観光資源が豊富そうですね。しかも筆者も山陰2県はぜっっったい行きたいと思っていました。この2県には「果て」を感じそうだから。京都北部の京丹後市も同じ理由から「北」を感じそう。

cantfoolme.hatenablog.com


【今後の逃北計画】

Amazon.co.jp: 逃北 つかれたときは北へ逃げます (文春文庫) eBook: 能町みね子: Kindleストア

自分が好きな「北」について書いた記事

cantfoolme.hatenablog.com

アプレロンデがゲランの名香として愛され続ける理由

 
アプレロンデを使ってみたいと思い始めたのは、かれこれ2年くらい前でしょうか。ついに購入しました。現在はEDTのみの取り扱いです。EDPも使ってみたかったな・・・っていうかそもそもあったのかな・・・。

f:id:usmilitarybase:20210511010152j:plain

本当はゲランでスタッフの方からコンサルテーションを受けて実際に香りを試してから購入したかった・・・だけど今の時期、人口が多いところに行くのはちょっと怖い。ウェブでアプレロンデをひたすら検索し、多くの口コミを読み込んで納得のうえで同ブランドの公式オンラインショップから購入した結果・・・・

イメージしていた香り

1906年にジャック・ゲランが創作。雨上がり、日差しがキラキラと降り注ぐ情景を表現したのが「アプレ ロンデ」です。バイオレットやアイリスなどの花々のパウダリーな香りに、バニラがアクセントとなった華やかなハーモニー。
パウダリー フローラル 優しく、デリケートで神秘的な香り。 繊細さにあふれた香り。トップはアニスシード。パウダリーでスパイシーなフローラル ブーケの香りが続き、朝露をまとった下草の中の散歩を思わせます。

(ゲランの公式ページより引用)


これを読んだ私は、瑞々しい香りを想像していました。イメージとしては下に貼ったツイートの画像のような、この雨露に濡れたバラが咲き誇る庭園から沸き立つような香り。湿った土や、花びらに弾かれて輝く雨の雫を思わせるような香り。だけど実際の香りは違いました。筆者が尊像していた何倍も繊細な香りでした。

実際に肌に乗せてみて感じたこと

筆者はフレグランスのレビューは@CosmeFragrantica(後者は英語のサイトです)というサイトを信頼しているのですが、Fragranticaに書かれていた「イメージとしては紫色のフレグランス」「お葬式の香り」「メランコリックな香り」というレビューが筆者の好奇心をかきたてたのです。こうして背中を押されて購入したアプレロンデをしゅっと肌に乗せてみて、彼女達が伝えたかったことがよくわかりました。
確かに紫色のイメージです。寒色系の香り。目の前の空気がひんやりとするような錯覚。お葬式の香りと言われるのは、アイリスやバイオレットの香り方、でしょうか。ややスパイシーなんですよね。
メランコリックな香りという表現にも納得しました。だけど暗いメランコリックではない。香りがとても繊細なのでノスタルジック寄りのメランコリックと言っておきましょう。この香りを嗅いで思い浮かべる情景は人それぞれだと思いますが、次回は是非雨上がりのタイミングにあわせて使ってみたいと思います。そしたらまた違った情景が瞼の裏に映りそう。天候が不安定な秋の雨が降ったある日に使ってみたら、また違った雰囲気が楽しめたりして♪

after-the-rain-3

好き嫌いが分かれるトップの秘密はアニスの香り

このトワレをつけてまもなく「一瞬正露丸の匂いがしなかった?!」と思うような、漢方の匂いがふと鼻を衝く瞬間があります。これ、アニスだと思うのですが、ここで好き嫌いがはっきり分かれます。そして筆者は最後までバニラの香りを感じ取ることはありませんでした。香りの持続ですが、個人差は当然あるでしょうが、私の場合は1時間ちょっとしか持たなかったものの、ヴァイオレットやアイリスといった「紫をイメージする香り」、そして恵の雨をたっぷりと受け止めた大地の香りを楽しんで、早く雨が降らないかなぁと願いました。そしたら雨あがりにこの香りをまとって楽しむことができるのに。

フレグランスメゾンの名香のすごさの秘密を詰め込んだアプレロンデ

アプレロンデを使ってみて最も強く感じたことが、フレグランスメゾンとしてのゲランの誇り。他のメゾンが絶対に思いつかないような、作ろうともしないような香り。オスが惹きつけられずにはいられないメスの香りだったら他のメゾンが量産してくれますが、にわか雨の後の情景を詰め込んだボトルを売り続けることができるのは、ゲランだけ。繊細で複雑で、例えば今から3年後に同じ香りを使ってみたら、同じにわか雨の後でもまったく違う情景を思い浮かべてしまうような、心に染み入る香り。愛され続ける理由がよくわかります。こんな香り、なかなか出会えない。
今回アプレロンデという100年以上愛される名香を手に入れたことで、ゲランのフレグランスメゾンとしてのプライドと美学を少しだけ理解できた気がするのですが、これはこれからもゲランのフレグランスは少しずつ集めていきたいと思っている自分にとってはとても大切なことです。
晩秋になったらいよいよ!ルール・ブルーを買う予定です。

ゲランのフレグランスには、ひとつひとつ物語があります。その中には似たストーリーを持つものも。「アプレ ロンデ」と「ルール ブルー」がそのひとつ。どちらも、自然の風景を切り取り、自然からインスピレーションを得た香りです。「アプレ ロンデ」が創作されたのは、「ルール ブルー」の6年前。「ルール ブルー」より水彩画的で、パステルカラーの趣があります。

(ゲランの公式ページより引用)


似たストーリーを持つ二つの香り。ルール・ブルーのストーリーのページを開くのは、もう少し先にしましょう。

アプレロンデと同じくジャック・ゲラン氏が調香したShalimarも素晴らしい。

cantfoolme.hatenablog.com

Kindleを買って生活が潤った


Kindleを買ったのは2019年の秋。充電器、事故保証プラン、保護フィルムもあわせるとしめて¥28,480でしたが、すごく良い買い物でした。Amazonの高笑いが聞こえてきそうなほど「これは本当によくできている・・・Amazonぼろ儲けだろうな」とは思いますが、それすら納得してしまうほどいいことづくめ。

f:id:usmilitarybase:20210502203055j:plain


Kindleを買って生活が潤ったというと「お金でも儲けたの?」と思われてしまいそうですが、残念ながらそっちじゃないんですよね。

  • 隙間時間の質が上がる
  • 居住空間がすっきりする

ゆえに心や生活に潤いが生まれるのです。

購入したきっかけ

同僚が言った「Kindleだと子供を寝かしつけながら読書できる」というひとことがきっかけでした。そうか。Kindleなら消灯した部屋でも読書が可能だわ♪と。それからしばらく考えたのち、今後5年はマンション暮らしだろうから、極力持ち物を少なくしておいた方がよいということもあり思い切ってKindle Paperwhite 防水機能搭載 wifi 8GB ブラック 電子書籍リーダーを購入しました。

細切れの時間を使って読書、勉強、ボキャビルができる。なのに荷物は少なくて済む!

駅で電車を待っている時。病院で診察の順番を待っている時。そんな風に日常生活にはちょっとした待ち時間が生まれることがたくさんあります。そんな時、携帯電話からツイッターを閲覧しながら笑いをこらえるのもまた楽しいものですが、こういう細切れの時間を活用しやすくなるのもKindleの素晴らしいところ。
どっぷりその世界に浸って読みたくなる小説もあれば、暇つぶしに読むのに最適な痛快エッセイもあります。そして家にいると読む気になれないような「とりあえず1回読み通さなくちゃ・・・」という実用書。こういうエッセイや実用書はまさにこの細切れの時間で読むのに最適。「せっかくできた暇な時間。どっちを読もうかな」と選べる便利さを知ってしまうと、もう紙の本を何冊も持ち歩くような生活には戻れません。ブックマーク/ハイライト/単語帳機能も使いこなして勉強や仕事の効率アップも実現します。

f:id:usmilitarybase:20210502200806j:plain

Kindleがバッグの中にあるということは、セラピストと本棚を両方同時に持ち歩いているようなもの

前節の続きになりますが、その時の気分にあった書籍を選んで読める便利さを手に入れつつ荷物はコンパクトなままということが、こんなに素晴らしいことだとは思いませんでした。
もう寝なくちゃいけないのにページをめくる手がとまらないような、眠る間も惜しんで没頭してしまう作品は素晴らしい。だけど常にそれを読みたいとは思わない。落ち込むようなこと、はらわたが煮えくり返るようなことがあって気分転換したい時には、何かもっと別のものが読みたくなることもある。働くことがつくづく嫌になってきた自分を奮い立たせるために素晴らしいビジネス本を読むも、モチベーションを程よく得たあたりで少し頭を休めたい・・・コミックでも読もうかな、という風に色々な選択肢が詰まったKindleは本当にありがたい。開くとそこに広がる世界の大きさと深さには、使い慣れた今でも感動します。

 

怪談を読むなら断然Kindleがいい

消灯したリビングでキャンドルを灯し、茶屋のチェリーボンボンをつまみながら読む怪談。たまりません。またベッドの中で読む時は、すぐ隣で寝息を立てる夫がいるのにまるで自分だけが違う世界にいるような錯覚に陥ります。
筆者が気に入ったのは三木大雲住職の怪談和尚の京都怪奇譚。ぞわっとくる怪談ではなく、この世を去りたくても去れない悲しい魂のお話を集めたような怪談。その魂が今は穏やかに眠っていることを祈りながら、暗い部屋で静かにシリーズ全三冊をあっという間に読んでしまいました。幼い頃から自分の身の回りに起こる不可思議な現象に対する恐怖心が小さくなりましたね。いまだに気味が悪いとは思いますが、コロナウイルスの感染の脅威がなくなったらすぐに帰省して、そういう魂と対峙してみたいと思います。

不可思議な現象について書いた過去記事


モノトーンの世界で十分(いまのところは)

f:id:usmilitarybase:20210502191533j:plain

Kindleを購入するにあたり迷ったのが、Kindleの読書専用タブレット=白黒にするか、あるいはFireといったカラーのタブレットにするかということ。Fireだったら活字だけではなく画像も楽しめるし、iPad Airを買ってKindleをダウンロードするのもいい。だけど結局自分は今までの書籍の購入履歴のほとんどが小説やエッセイなので、モノトーンの世界を選びました。購入して一年半が経ちますが、その判断は正しかったです。カラーのものも楽しめるタブレットにすればよかったな、と思ったことはありません。

  

まとめ

コロナウイルスに感染しないよう、あちこち気軽に出かけることを自粛している生活の中だと特にKindleのありがたみを実感します。

 

Kindle Paperwhite 防水機能搭載 wifi 8GB ブラック 電子書籍リーダー

グリーン車の車窓から母は何を見た


 

組織の理不尽な部分や人間関係に対する疲れみたいなものが蓄積してきたのは、社会人になってから数年経った頃。振り返ってみると、社会人1年目の右も左もわからぬ頃は気楽なものだったな、などと思いながら、帰省の際にグリーン車に乗ってみたもその頃でした。とにかく疲れていて、少しでも優雅な気分になりたいと思ったことがきっかけでしたが、それ以来ずっと帰省に限ってはグリーン車に乗るようになりました。そのくらい気に入ったのです。静かで広々とした車内から見る風景。旅のお供に持ってきていた小説は結局一度も開くことがありませんでした。ささくれだった心に染み込むささやかな贅沢こそが、グリーン車での旅が与えてくれたものでした。
この贅沢は、特に誰にも話したことはありませんでしたが、最後に帰省した2020年の年明けに両親と話していたら、その流れの中でふとしたことがきっかけで知られてしまいました。
「高くてもいいの。あの幸せな時間を買えるなら惜しくない」
すると母が懐かしそうにこういうのです。

「あなたが中学校を卒業する年の冬、二人で関西に旅行したでしょ?あの時乗った特急は、実はグリーン車だったんだ。あなたには違いがわからなかったかなぁ」

旅行したことはよく覚えています。真冬の荒れた日本海沿いを特急で4時間くらい走ったでしょうか。そして15歳だった自分は「旅行の時くらい明るい太平洋側を走りたかったな・・・」と舌打ちしたい気分だったことを思い出しましたが、グリーン車の旅の心地よさなど知る由もありませんでした。当時の私には癒される必要などなく、時間の価値もわからなかったのですから。

N700 Shinkansen Green Car


母から二人で一緒に乗ったのがグリーン車だったという話を聞いたことで、しばらく私は母の人生について考えることになりました。母娘で乗ったあの特急が我が家の最寄り駅を出発する時に感じたであろう母の高揚感。「あの家から離れられる」それだけでよかったんじゃないかな、なんて。閉鎖的な農村に嫁いだ頃、母はまだ若かった。愛し合っていればなんでも乗り越えられると思っていたのではないだろうか・・・だけどいざ結婚してみると、豪農になり損ねた見栄っ張りな家の嫁の生活は、思い描いていたものとは随分違ったはず。母娘二人旅、行先なんてどこでもよかったのではないか。あの家の嫁という立場から解放されるのであれば、どこでもよかったのか。
金沢に到着した時に母が駅弁を買ったことを思い出しました。駅弁という気分ではなく、温かい食事がしたいと思った私の横で嬉しそうに美しい駅弁を眺めて食べる母。そうやってどんどん家から遠ざかることでどれほど母が心の平和を得ていたか、当時の私には想像もつかなかったけど、自分がグリーン車に乗って幸せな時間に浸るという経験をしてみると、あの束の間の幸せがどれほど母にとって価値あるものだったのかわかるようになりました。そしてまたいつかその特急に乗って、母と日本海を眺めながら旅に出たいと思ったものの、その特急はもう廃止されてしまいました。
でももうよいのです。母が数年前こういいました。「以前はね、こうしてあなたに会いに来て刺激や娯楽の多い都会で遊んだ後に田舎に帰る時、憂鬱だったの。でももうそんな風に感じることもなくなった」
義理の両親が亡くなり、長男の嫁としての務めがようやく終わったのです。 
私達三人の子育て、そして義理の両親の介護、お疲れさまでした。コロナウイルスの感染拡大の恐れがなくなった頃、また一緒にグリーン車に乗って旅に出ましょう。

cantfoolme.hatenablog.com

cantfoolme.hatenablog.com