長い冬の後に訪れた春が鼻先をかすめたような香り Blasted Bloom

2021年春の香り。全く違うタイプの2本を選びました。まず一本目は英国王室御用達PENHALIGON'SのBLASTED BLOOM(ブラステッド・ブルーム)。レディースですが、ユニセックスでも使えそうなアクア系の香りが苦手な人は決して使ってはならない香り。筆者はこの香りに救われました。

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筆者の故郷である日本海側の春の海の香りに共通する部分があり、コロナウイルス感染拡大の脅威を考えるとまだ当分帰省はできない私にとって、脳内に故郷の春が広がるような感じがして癒される香りです。長く暗い冬がようやく去り、アスファルトが顔を出す。乾ききったアスファルトの香りがするのは、まだ当分先の話。
そのアスファルトや雪解け水を含んだ土壌をかすめた風の香り、長い冬を耐え忍んだ緑や花々が、この時をどれほど待ちわびていただろうかと息を吹き返しささやき始めたような香り。まさにBlasted Bloom。だからあと1週間もしたら使えなくなります。使ってもよいのですが、気分的にね。肌寒いうちに使うほうがしっくりくる香り。来年の春、またよろしくお願いしますといって棚に飾っておこう。調香師はアルベルト・モリヤス氏。ああ、こうしている今もボトルを手に取りその香りを楽しんで故郷の海から吹く風を思い出しています。ありがとう、アルベルト!

このフレグランスについて日本の梅雨~初夏に纏いたい香り - マリア様はお見通しという記事でさらっと触れたことがあります。2年前に書いた記事なのですが、貧しい語彙で「青い香り」としか表現できなかったあの頃となんら感想は変わらず(笑)。
公式ページを見ると

 

北スコットランドの海岸風景がモチーフ。ピュアなミネラル感にワイルドベリーやバラが溶け合う香り。 【香調】フローラル

 と書かれているのですが(画像が削除されているためもしかすると廃版になってしまったのか、あるいはリニューアルに向けてページも更新中なのかもしれません)、北スコットランドと聞いて納得です。

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こんな心象風景が似合いそうな香り。夫も気に入っていて一緒に使っています。本当はこのBlasted BloomはBlasted Heath(←メンズ)とペアで使うそうなのですが、Blasted Heathは廃版のようです。残念。
また香調はフローラルとなっていますが、トップはかなりすっきりとしたアクア系です。フローラルが感じられるのはつけてから20分くらい経ってからでしょうか。
2021年春の香り、二本目は次回に譲ります。

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あの香りが復活 GUERLAIN アプレ・ロンデ

ずっと買おうと思っていたらなんと販売終了・・・。終了の理由は売れなかったから?などと嘆いていたところ、なんと販売再開していました!

 

GUERLAINのAprès l'Ondée(アプレ ロンデ)。

 
これはかつてのボトル。

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そしてこのボトルで再登場。

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やれシャリマーだのモン・ゲランだのココナッツ・フィズに走ってしまっているうちに販売が終わっていた香りが復活して感激です!
 
以下、同ブランドの公式サイトより引用
1906年にジャック・ゲランが創作。雨上がり、日差しがキラキラと降り注ぐ情景を表現したのが「アプレ ロンデ」です。バイオレットやアイリスなどの花々のパウダリーな香りに、バニラがアクセントとなった華やかなハーモニー。
しばしの間雲の向こうに隠れていた太陽の光が、雨露に濡れた草花に降り注ぐ時・・・そんな情景を詰めこんだ小瓶は私の心を震わせ、使ってみたい!と思っていました。あきらめきれずに、この香りの名前を検索し、故人を懐かしむような感じで読める文章でもないものか・・・と思っていたところ、なんとアプレ・ロンデが復活するらしいとの噂を発見し、GUERLAINに問い合わせてみたところ、以下のような回答をいただきました(感涙)。

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弊社HPへお問合せいただきありがとうございます。
また、日頃よりゲランをご愛顧賜りまして重ねて感謝申しあげます。
アプレロンデは下記限定店舗にてすでに販売が開始しておりますが、詳しくは直接ご希望の店舗までお電話にてお問い合わせ下さいませ。
 
・新宿伊勢丹フレグランスコーナー:03-3359-5955
 
・ラブティックゲラン帝国ホテル店:03-3592-6694
 
・ジェイアール名古屋タカシマヤ:052-566-8384
 
・大丸心斎橋店新本館:06-6251-6064
 
・阪急うめだ本店:06-6313-7477
 
 
 今後ともゲラン製品をお引き立ていただきますようお願い申し上げます。
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筆者宅から最も近いのが新宿伊勢丹フレグランスコーナーなのですが、これを書いている現在、Covid-19感染防止対策のため東京は筆者にとって外出禁止対象となっています(夫が横須賀基地勤務の公務員のため、基地の司令部が定めた規則に扶養家族である私も従う必要があります)。あと2か月はおあずけかなぁ・・・。まさか2か月のうちに再び販売終了!なんてことにはならないと思うし、その前に公式オンラインストアの方で販売も始まるかもしれないので、待つことを楽しむとします。

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ツイ廃のくせに、なぜ私はこんな大切な情報をスルーしていたのでしょう・・・。



関連記事:真夏の夜の夢を詰め込んだ小瓶 Shalimar by Guerlain - マリア様はお見通し


「望んでいない時間指定」されなくなった!


筆者が利用しているコンタクトレンズの販売業者が「望んでいないのに勝手に配送時間を指定して送ってくる」という謎の迷惑なサービスをやめました。配送業のドライバーの皆さん、よかったですね!そして今まで本当に大変だったと思います・・・・。

こちらは時間指定「なし」を希望しているにも関わらず、メーカー直送のためメーカー側が「できるだけ速くお届けしたい」ために自動的に指定されてしまう配送日時に、私は長い間困惑していたのです。

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ところがなんと今月に入ってオーダーした時のこと。いつものようにメーカー指定の配送業者である佐川急便のカスタマーサービスセンターに電話して、伝票番号を伝えて「時間指定なし」に変更してもらおうと思っていたその時(もうこの手間が煩わしいけど、販売している側はこれを「お客様のため」だと思っていますからね・・・・)、コンタクトレンズが届きました。
箱に貼られているメーカーによって貼られたラベルを見ると、なんと「配送日時指定なし」になっていました!今までは最速の配送日時が勝手に貼られていたのに!そしてオーダーした側はまさかそんな日時指定を知らないから、当然配達時不在の確率大ですよ!この「受け取る側も配達する側も喜ばない無駄なサービス」がなくなったことは大変よいことだと思うので、会社名を出しますね。レンズアップルさん、これからも注文した人間が「配送日時指定なし」と言ったら「なし」でお願いします!!!!!

ちなみに配送業者は佐川急便から日本郵便に変わっていました。

透明感のあるオリエンタルな香り ペンハリガンの「マラバー」

今回購入したのがPenhaligon's(ペンハリガン)のマラバーというオードパルファム。ケチって50mlを買わず、100mlを購入すればよかった・・・・そのくらい気に入りました。そしてこんなに多くの人に「ん??なんかいい香りがする」と言われたのはこのマラバーが初めてです。

 

欧米人が抱くステレオタイプのこてこてのオリエンタルな香りではなく、トップノートはどこかエキゾチックでありながら、芯のある透明感が感じられるすっきりとした紅茶の甘い香り・・・・。日本ではフレグランスのセレクトショップ「ラトリエ デ パルファム」で取り扱われており、そこのウェブサイトではマラバーの香りについて「東インドへのスパイス・ルートを巡る旅をイメージ」と書かれているように、同じ紅茶でもアメリカ南部のあの早死にしたかったら毎日飲もう!といった甘ったるいスウィートティーではなく、あくまでもインドやスリランカの茶葉というイメージ。ミドルノートの主張が始まると甘さが控えめになり、ちょっとスパイシーになるためこのイメージがさらに強く漂います。もう最高。

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私は香水をつけてもあまりトップ→ミドル→ベースの移り変わりがよくわからない嗅覚の持ち主ですが、マラバーに関してはその移り変わりが楽しめました。季節を問わずにつけられる香りです。
今回はラトリエ デ パルファムの店頭でこの商品を購入しましたが、スタッフの方の知識の豊富さには本当に驚かされました。ちょっとした雑談から筆者が求めているもののヒントを探し出して、こんな香りもありますよ、と勧めてくる香りは、ストライクゾーンのど真ん中であったり、あるいは私にとっては未知の香りとの遭遇で、香りを通じてセラピーを受けているような気分になります。

ペンハリガンの他の香りは以下の記事でもさらっと紹介しております。

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バブル時代の「大人のいい女」安井かずみ

やっと読みました。
バブル時代を社会人として過ごした女性にとって、お洒落のアイコンだった安井かずみさんの著書です。

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まだ女性があたりまえのようにオフィスでお茶汲みをさせられていた頃、こんな女性がいたということが信じがたいです。世の中がメッシーだのアッシーだのと騒いでいた頃、そういうものとは無縁の世界で、自分が美しいと思うものだけに囲まれて生きた、エレガントな女性。

私がお慕いする作家、山田詠美さんがエッセイで「フレンチフレイヴァーの女」と評した安井かずみさんに関する書籍を何冊か読みました。それ以来「もっとこの人のことを知りたい」と思っていた女性でもあり、安井さんご本人が書かれた著書を読むのはこれが初めてですが、とても魅力的で洗練されていた女性であろうことはよくわかりました。だけどあまりにも前向きで貪欲で、私はちょっと重く感じてしまった部分があることも最初に書いておきます。You need to chill.と言いたくなるというか。だけどバブル経済の真っただ中で世の中全体が元気だった日本では、このくらいでもちょうどよかったのでしょう。

本書を読んで、安井さんとそして親友だった森瑤子さんは欧米かぶれのひとことで片づけてはいけない人達だと思いました。彼女達が美しいと思うもの(物質的な意味だけではありません)が、本当にたまたま欧米にあった。ただそれだけ。それは彼女達がところどころ使用する英語を見ていてもわかります。
バブル時代にもおそらく数多くの和製英語が誕生していたであろうことは想像できますが、本書を読む限り、安井さんはちゃんと英語本来の意味や微妙なニュアンスをちゃんと理解して使っていますし、森さんもそうでした。「英語の方が格好いいから」と装飾のように英語を使っていたのではない。
日本に自分達が憧れるような大人の女が少なかったから、どうしても海外に目が向いてしまった結果なのでしょう。

目次を見ただけでそのエッセンスの濃厚さと芳香さに心が震えてしまうほど、今読んでも十分面白い(今読むからこそ面白いともいえるでしょう)一冊であることがわかりますが、安井かずみさんというファッションアイコンを作り上げていた緊張感と美意識が最もよく反映されていたのが「ディナーは愛の舞台」(p.86)ではないでしょうか。

ただ空腹を満たせばよい・・・時代は終わった。大人の女はディナーの時、美しい女に立ち返る。そして、美しい女振りを発揮できる唯一の一日のスケジュールである

夕飯でも、夕食でもなくディナーと書いたのは、ちょっとおしゃれに、少し気取って、きちんとした夜の食事のイメージのため、と安井さんは書かれています。この部分を読んでいるだけで、洗練された大人の女性がディナーを楽しむ様子が目に浮かび、わくわくしました。
私にとってこういうディナーはちょっとしたイベントです。「たまにはおしゃれをして、お気に入りのあのお店で」と。だけど安井さんにとってはそれが毎晩あたりまえのように行われる儀式でした。外食しなくても、自分と夫の審美眼にかなった物/人だけが集められた自宅で、優雅な晩餐を楽しむ。おそらくバブル時代に流行っていた、大人たちが湯水のようにお金を使っていた高級レストランでは、安井さんはその趣味の悪さが耐えられなかったのではないかと想像しています。お金を使って騒ぐことに興味はなかったでしょうから。ちなみに安井さんも当時の格好いい大人達の多くがそうであったように、キャンティの常連だったそうですね。

そう、日本では見つけられない格好いい大人の女のアイコンとされていた安井さんにも、ロールモデルとなった女性がいました。それがこの「キャンティ」を夫とともに創業した川添梶子さん
当時の常連客を見ると三島由紀夫、安部公房、黒沢明、岡本太郎、小沢征爾、篠山紀信、加賀まりこ、かまやつひろし、ビートたけし、坂本龍一、村上龍、松任谷由実(Amazonより引用)とまあそうそうたる顔ぶれで、「金さえあれば常連として受け入れてもらえるようなたたずまいの店ではない」ということがわかります。

キャンティ物語 (幻冬舎文庫) (日本語) 文庫 – 1997/8/1

 

晩餐をより楽しくするために、安井さんがゲストをもてなすために重視したのがファッションやテーブルセッティングに加えて、会話です。この会話を楽しくするために、彼女は日々学習を怠りませんでした。教養、ユーモアのセンス、まれにもたらされる沈黙の楽しみ方・・・。ただこのディナーに日常的につきあわされる側はかなり疲弊していたと思います。
夫の加藤和彦さんは才能豊かな音楽家でしたから、クリエイティブな仕事をする人であるからこそ、ダウンタイムは欲しかったと思います。優雅な晩餐で妻を接待し、また常にインスパイアしあう関係でい続けようとするのは厳しいでしょう。時にはTVの前に座って、冷凍食品を温めてそれを食べておしまい、なんて夜も過ごしたかったのではないでしょうか。
加藤さんに関しては過去になかなか真似できない、バブル時代の憧れのカップルのエレガンス - マリア様はお見通しという記事を書いておりますが、安井さんが若くして亡くなった後すぐに彼女の荷物を整理して、新しい恋に生きた彼を責める人もいたそうです。だけど私は本書を読んで、彼が演じてきた完璧な紳士役の荷の重さを知ることとなりました。加藤さんほどの男性であれば、この役を演じることを楽しめていた部分も大きいであろうとはいえ、やはり家庭にいても緊張感を保ち続けるというのは疲れたはずです。
愛する女性が亡くなったのですから、当然大きな喪失感はあったことでしょう。だけどそれと同時に実は解放感もあったのではないかと思ってしまうほど、安井さんが追求しつづけた「美しく優雅な生活」につきあい続けるのは、仕事を終えて帰宅しても、本業よりもハードなパートタイムの仕事が待ち構えているようなもの。このようにパートナーに要求するものが大きかった安井さんではありますが、自分自身に対してとても厳しい人でもありました。あたりまえか。

今夜の照明はどうする?
テーブルセッティングなんだけど、どんな気分?
音楽はどうしようかしら・・・・。

来る日も、来る日も・・・・・。

バブル時代の大人達が憧れるカップルだった二人を見ていると、光が当たる場所には必ず影がある、と思ってしまうのです。

贅沢に、美しく大人の女―自分をもっと豊かに生きる (日本語) 単行本 – 1991/8/1



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