直感で「この人は・・・」と思った出会いを、運命の出会いに育てる
「きれいなダイヤをつけてますね、お嬢さん。残念ながら偽物だけど」
ナディーヌさんがエドモン・ロスチャイルド氏と最初に交わした会話の始まりはこんなものでした。ナディーヌさんがロスチャイルド氏に出会った晩餐会というのも、実はあまりにもくたびれていたため欠席しようと主催者に電話を入れたところ「お待ちしていますよ」と先に言われてしまって断れなくなり、あまり気が進まないまま出席した宴でした。
もしあの夜ナディーヌさんが予定通りその晩餐会に顔を出さなかったとしても、二人はどこかで巡りあっていたでしょう。そう思わせるものを、本書を読みながらひしひしと感じましたが、それはまた他のポストに譲るとしましょう。
女優時代のナディーヌさん
二人が出会った頃、ナディーヌさんは既に社交界に足を踏み入れて十年が経っていて、社会的地位のある男性からの関心や欲望、そして誘惑の眼差しにも慣れきっていたし、また異性を惹きつけることに関しては自分には才能があるということも自負していました。
そんなナディーヌさんは、ディナーの後、皆がコーヒーをいただこうと上のフロア(コーヒーを飲むためにフロアを移動する晩餐会・・・)に移動しようという時に、ロスチャイルド氏に「二人で飲みに行きませんか?」と誘われるのですが、翌朝早く旅に出る予定だったため、誘いを断って日付が変わる前に晩餐会を後にします。
そしてロスチャイルド氏に「次はいつ会えますか?」と聞かれたナディーヌさんは、「三日間パリを空けるので・・・」と答えます。翌朝出発の旅が日帰りであるにも関わらず。だけどそれは決して焦らすためではありませんでした。ではどうしてそんなことを言ったのか、それは本書を読んでみてくださいね。
そして二人はすぐに再会するのですが・・・・
「この男は恋の駆け引きの達人なのだろうか、それとも礼儀知らずの変人なのだろうか?」
エドモンさんったら自分から強引に誘っておきながら、ナディーヌさんに対して失礼な態度をとってしまいます。私が同じことをされたら椅子を蹴って帰っていただろうと思いますよ。だって百戦錬磨の妙齢の女性が「あの人の心をきっと射止めてみせる」と気合を入れて出向いた再会の場で、エドモンさんは他の美女にご執心のふりをしていたのですから。お二人が出会った頃、もうエドモンさんは33歳でしかも既婚者だったことを考えると、ちょっと子供っぽい駆け引きですよね。
ナディーヌさんは、ぐっとこらえて椅子を蹴りませんでした。そしてこの駆け引きはナディーヌさんに軍配があがり、二人でこっそりと店を抜け出します。そして火遊びで終わってもおかしくなかったそれは、生涯の恋、愛となりました。
出会いをものにするための瞬発力と集中力、そして冷静さ
運命の出会いというのは、後になってからでないと「ああ、あれはそうだったのか」とわからないものだと思いますが、出会いをものにできる人というのは、無駄な、あるいはくだらない駆け引きで出会いを台無しにしたりしないのだなぁと思いました。
「あの人の心を射止めてみせる」と思ったら、瞬発力も冷静さも必要です。それらを持っていれば、人の気持ちを試したり踏みにじったりするだけのくだらない駆け引きではなく、出会いの芽を花開かせて、恋に、そして愛に育てていくための駆け引きができるはずです。
「男は当分いいや」と思うほど恋愛で疲れ果てている時など、しばらくはステディな彼氏を作らずに戯れの恋を繰り返すこともあるでしょう。恋を育てるためにする駆け引きではなく、駆け引きそのものが面白くて仕方がない時期などね。
だけどそういう戯れの恋の中で、相手よりも優位に立てている状態だけに楽しみを見出すかのように駆け引きを繰り返していると、薄っぺらい自称恋愛の達人になってしまいそうではありませんか。
【ナディーヌ・ロスチャイルド夫人に学ぶシリーズ】
- ロスチャイルド夫人に学ぶ (1)お金がないことを言い訳にしない、自立した少女時代 - マリア様はお見通し
- ロスチャイルド夫人に学ぶ (2)手放す勇気 - マリア様はお見通し
- ロスチャイルド夫人に学ぶ(4)女の人生の岐路 - マリア様はお見通し
- ロスチャイルド夫人に学ぶ(5)愛する男性に尽くすということ - マリア様はお見通し