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マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

ロスチャイルド夫人に学ぶ(6)あげまんに共通していること

今日は本題に入る前に、ウォームアップを兼ねて少し他のお話を書きたいと思います。
ロスチャイルド夫人の著書「男爵夫人は朝五時にご帰館」にこんなことが書かれています。

「もう一つ、客のためのこまやかな気配りとして、葡萄酒はガラスの水差しに移して食卓に出す。そうすれば、酒の色が引き立つし、澱がグラスに入る心配もなくなるからだ」

水差しに入れてしまうということは、ワインの品名がわからなくなってしまうじゃないですか。 桁違いの富豪になってしまうと、高級ワインであることを一目瞭然にしてくれるラベルの力に頼らないんだなぁと思いました。テーブルの上に置かれた高級ワインのボトルを眺めて、我先にと薀蓄を語りだすのは成金のやることなのです。
以上、成金達がもつ小金すら持てない人間の僻みっぽい感想でした。ここから先は本日の本題です。

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ロスチャイルド夫妻(シャトー・クラークの葡萄園にて)

ついに正妻になれた。だけどそこは決してゴールではない

大富豪の夫人というと、暇を持て余して「大きな館には大勢の使用人達がいて、彼らが何でもやってくれる。何不自由ない生活でも孤独を感じるわ」みたいな、けだるそうにしている感じだと思っていたんですよ。
だけど実はそれとはまったく正反対で、ロスチャイルド夫人の場合は、結婚して半年もしないうちに夫のエドモン氏が夫人のために秘書をやとっています。

「結婚後ほどなく、私はひとりの男性と結婚すると同時に、≪エドモン男爵夫人≫という役職についたも同然だ、ということに気づいた。それはフルタイムの仕事だった」
24時間営業とまではいかないけれど、この役職をちゃんとこなそうと、ナディーヌさんは努力を重ねました。
エチケットの本を手当たり次第読んだ、とありますが、これまでもそれなりに敷居の高い晩餐会に招かれていた人が勉強しなおさなくてはならないほど、エドモン男爵夫人が飛び込んだ社交界というのは全く新しい世界だったのです。

晩餐会に呼ばれると紹介の作法を観察したとありますが、おそらく席順の決め方なども夫人のことですからしっかり観察して、ルールを学んだことでしょう。
学んだのはエチケットだけではありません。おもてなしに必要な情報(晩餐会で自分が素敵だなと思ったもの)についてもしっかり収集していました。そしてそれらはハンドバッグに入っている小さな手帳に書き込んだのです。このように、マダムは「エドモンと結婚したからもう一生安泰ね♪」とは思っていませんでした。
ピンクの芍薬のブーケを受け取り、プロポーズされた日の感動が二人で歩む人生における幸せのピークではないと、マダムはわかっていたのです。それは二人の人生のスタート地点なのですから。
「昔は大切にしてくれたのに・・・」という女性達は、おそらく結婚式の日を幸せのピークに設定してしまった人達なのでしょう。

自分を選んでくれた夫のために、できる限りのことをしたい

右も左もわからぬまま社交界にデビューしたら、晩餐会では自分の夫に金魚の糞みたいについて回って、夫が他の人と談笑し始めると、自分はぽつんと取り残される。そこで機嫌を損ねて、帰宅してからその不満を夫にぶちまける、ということをするのはさげまんで、マダムのように教えてもらう、迎え入れてもらうのを指をくわえて待っているのではなく、自ら「覚えよう」「慣れよう」とする精神的に自立した女性じゃないとあげまんにはなれません。
今では気になったこと、知りたいことは何でもググれる時代です。だけどそういう検索エンジンが存在しなかった時代に、マダムは全部自分で恥をしのんで人に聞き、自分でその情報をストックして行ったのです。
「屋敷のことを取り仕切ったり、客を招いた時に僕と一緒に挨拶してくれる女性が必要だから、上流階級のユダヤ系の娘と再婚しなくてはならない」というエドモン氏の言葉に一度は打ちのめされたマダムですが、こうして努力を重ねて、夫の期待以上の「男爵夫人」に育っていくのです。
「ナディーヌ、慣れない生活で困ったことはないかい?」とエドモン氏に労ってほしい、かまってほしいと思ったことは、マダムには一度もなかったのではないでしょうか。そしてエドモン氏も多忙でしたから、夫人のベビーシッターをしている暇もなかったはずです。
このように精神的に自立していた夫人でしたが、だからといって社交界であれも教えて!これも教えて!私やる気満々!とがつがつしていたわけではなく、上手に他の夫人達に取り入りながら学んでいったと思います。しなやかにね。

ロスチャイルド夫人に学ぶシリーズ <完>




【ナディーヌ・ロスチャイルド夫人に学ぶシリーズ】