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マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

ロスチャイルド夫人に学ぶ (2)手放す勇気

偉人・奇人・変人 福音

「ダニー・ロバンの扮する娘が花屋の青年に恋をしていた。やがて、その娘は、髪に白いものの混じっている大金持ちの紳士に出会い、老紳士の好意を受けてシャンパンを飲んで暮らすか、恋に生きて水道の水で我慢するか、という選択を迫られて多いに悩む。ラストシーンがいまでも私の目に浮かぶ-大きなホテルのエレベーターの前で、ダニー・ロバンが迷っている。
若い恋人とともにロビーに踏みとどまるべきか、老紳士とともにエレベーターでうえへのぼるべきか、それが問題だ!以来、≪リフト!≫というのが私達の合言葉になった。私達は、決してエレベーターに乗り遅れまい、と心に誓っていた」

 (マダムの著書より引用)

確かにマダムはエレベーターに乗り遅れなかった。だけど乗り遅れなかったことよりも、乗るべきエレベーターを見誤らなかったことの方がすごいと私は思いました。

イギリスの資産家の御曹司との出会い

名作への出演のチャンスに恵まれなかった女優時代、カンヌ映画祭に出席するためにタクシーをつかまえようと思っていたけれど、なかなかつかまらない。胸の部分を膨らませたドレスを着てバスに乗るのも嫌だし、かといって遅刻するのも嫌。
そこで信号待ちをしていたコンバーチブルに乗っていた男性に、当時スターの卵だったナディーヌさんは「映画祭会場の方に行かれるのなら、乗せてくださらない?」と声をかけました。
「たいていの英国人同様、すりきれた服を着ていた」その男性は、実は大金持ちの貴婦人の息子、ランス・カリンガム氏でした。そんなことを知らずにヒッチハイクしたナディーヌさんは(現代風に言うとこれも「引き寄せ」(笑)なのでしょうか)、会場について車を降りるといっせいにフラッシュがたかれて狐につままれたような気分だったといいます。

「誰かと間違えられたのかしら?」

フラッシュをたかれた理由が彼女のエスコート役であるランスであるとわかった途端、彼女はその晩彼のもとを離れませんでした。報道陣に顔を売る機会を、したたかで賢いナディーヌさんが見逃すわけがありません。


(下の画像:カンヌ映画祭にて。下段右から二番目がマダム。上段右端がランス氏)

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優しくて裕福な恋人と結婚して金銭的には不自由しなくても、義母の支配・管理は不自由。それを天秤にかけてみた

こうして出会った二人は次第に愛し合うようになり、婚約しました。そしてその婚約パーティーも終えて結婚式を数週間後にひかえたある日、ナディーヌさんはランス氏と、そして大金持ちでエキセントリックな義母(になる人)とともに骨董屋に行きました。
そこで「これとこれとこれ、全部この住所に届けて頂戴」と義母が店員に命じてナディーヌさん達の新居の住所を教えたのを見て、「私は時と場合によってはおとなしく人の言うことをきけるが、自分の生活が一から十までこの人に管理されるのは耐えられない!」とナディーヌさんは考えます。そして買い物を終えて車に向かう途中に、ランス氏の手を優しく握り、別れを告げたのです。
「このエレベーターには乗らない」という早く、そして思い切った決断ができる人だったからこそ、乗るべきエレベーターもわかる・・・あとは≪リフト!≫あるのみです。

売れないB級女優でも誇り高く生きる

他にもこんなエピソードが紹介されていました。
ある映画に出演してからというもの、ナディーヌさんはイギリスの映画プロデューサーから仕事の誘いが舞い込むようになっていたため、ロンドンに出向いたそうです。そして到着の日に映画会社の宣伝係から、顔を売るためにアメリカの人気歌手かイギリス貴族と一緒に取材に応じるように言われ、ナディーヌさんは後者を選びました。
ところがその貴族と待ち合わせるために超一流ホテル・ドーチェスターのロビーに行ってみると、なんとそこにはその貴族と並んで一頭の牝牛がいたのです。実はその貴族は取材を利用して自分の牧場の宣伝をしようと思っていたのでした。(ロビーに牝牛・・・・想像つかないんですけど・・・)
ナディーヌさんはその公爵に挨拶もせずにその場から逃げ出しました。
「顔を売るために公爵と写真に写るのはありがたいけど、四つ足のライバルも一緒だなんてまっぴらごめんだ!」
顔を売るために手当たり次第メディアに露出するのではなく、ナディーヌさんは長期的な視点から見ていたのでしょう。人生はこんな風に取捨選択の繰り返しだけど、ナディーヌさんは捨てるべきものは本当にあっさりと手放してしまう人なのだなぁと思いました。

そんな夫人がロール・モデル(生き方をお手本にしたい人)としていたのが、親子丼(笑)でその名が今でも語り継がれる寵姫、ディアーヌ・ド・ポワチエだそうです。

(フランス史に興味がある人は楽しめると思うけど、ディアーヌとフランソワ一世ーアンリ二世親子に関する記述が少なすぎてがっかりしました)

【ナディーヌ・ロスチャイルド夫人に学ぶシリーズ】