やはりキム・ヨナなしではオーサー氏を語れない




まだ予約受付中の段階なのに既にアマゾンではカテゴリ別ベストセラー1位。すごいね、「チーム・ブライアン」。私としてはやっぱり第二章の「キム・ヨナ」が気になるところです。
といいますのも、私はオーサー氏のすごいところは、ヨナさんにトリプルアクセルの習得をあきらめさせたところだと思うのです。
フィギュアスケートは1点入った!と誰の目にも明らかな球技と違って採点競技ですから、現行のルールや採点基準を研究し尽くして傾向を知り、対策を練る必要があります。
そしてその結果、出来映えの良さによってつく加点の重要性がわかったのであれば、その加点をこつこつと積み重ねない手はない、とヨナさんを説得する必要がありました。難易度の高いジャンプを新たに習得するよりも既に飛べるジャンプを磨いて、出来映えをよくして加点をもらおう!と。
そして「真央にできて私にできないこと」であった3Aの習得にこだわっていたヨナさんを説得し、チームが全員同じ方向を向いて進んだ結果は、皆さんもご存知のとおりです。

既に飛べるジャンプを磨き上げていった結果、バンクーバー五輪の前のシーズンには、キム・ヨナは見ていて転ぶ気がしない、飛べて当然という風潮までできあがってしまいました。そしてジャンプに対して自信と余裕を持つことは、プログラムの細部まで美しく仕上げることを可能にしました。
海外の解説者(たしかNBCだったと思う)がプレ・バンクーバー五輪シーズンのスケート・アメリカのSP前の6分間練習の様子(助詞の「の」が多くてすみません)を見て笑いながら"A woman and girls" (大人と子供)と評したのは記憶に新しい方も多いと思います。もちろん大人はヨナさんです(子供の中には安藤美姫さんもいた・・・)。
あの頃のヨナさんはスケーティングがキレキレで、ちょっとピークが早く来すぎてはいやしないだろうか?と余計な心配までしました。ところがバンクーバー五輪シーズンに入ってみると、それは杞憂に終わりました。かつての妖精のような面影はなく、貴婦人のような風格を備えた彼女がリンクの上で美しく舞っていたのですから。あの別格感はすごかった。
バンクーバー五輪までの四年間、チーム・ブライアンが綿密に立てた戦略に対し、ヨナさんも迷いがなかったのだなぁと思いました。このチームで戦えば勝てる、という信頼は彼女にとって心強かったことでしょう。

いよいよ来週発売です。ヨナさんに3Aをあきらめさせるのは至難の業だったのでしょうか・・・。私は意外とあっさりと納得してくれたと予想しています。彼女、賢そうですからね。
オーサー氏に師事し始めた当時の彼女は、まだ16、7歳の少女だったわけですが、そのくらいの年齢の女の子が「何かを手に入れるためには何かをあきらめろ」と言われてどうしたのだろう・・・とそのあたりを読んでみたいです。

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