「チーム・ブライアン」の行間を読む (2)手のかかる子ほど可愛い ハビエル・フェルナンデス選手


「もうヨナを見てもらわなくてもいいから」

キム・ヨナの母に一方的にこう告げられたオーサー氏は、わけがわからぬままメディアの対応に追われ、そしてもう一人の教え子であるアメリカ人選手アダム・リッポンも、しばらくするとチーム・ブライアンを去っていってしまいました。こうして由緒あるクリケット・クラブは「空の巣」となり、チーム・ブライアンのメンバー・・・とりわけオーサー氏の心には大きな傷と穴ができてしまいました。
だけどヨナさんやリッポン選手が去った後の穴が大きいということは、そこに新たな素晴らしい選手がやってくるスペースができたということでもあります。 しかも大きな穴にぴったりの、とんでもない選手が。

師弟関係をビジネスライクに割り切れない性格のため、キム・ヨナとの師弟関係解消に傷ついていたオーサー氏のもとにスーツケース一つでやってきたのが、スペインのハビエル・フェルナンデス選手。

photo courtesy of THE VANCOUVER SUN

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まあとにかくこの坊やがルーズなのですが、いちいち腹を立てていたら身も心ももたないため、締めるところはしっかりと締めてあとは「スペイン人だからしようがないのです」と温かく見守るオーサー氏に、この坊やは心を開きました。 「ハビエルだけを谷に突き落としてあがっておいでと言ったら、ハビエルは谷の中で暮らしてしまうタイプ」 とまで言われてしまったフェルナンデス選手も、チーム・ブライアンが一緒にその谷に飛び込んで行って寄り添った結果、2011年のスケート・カナダで2位になり、グランプリシリーズ初の表彰台に乗りました。その後もスペイン人選手初の快挙を次々と成し遂げていきます。練習しろ!と尻をたたいても結局本人のためにはならず、本人が自主的に練習に集中し、力を入れるようになるまで、彼のパーソナリティにあった接し方をチーム・ブライアンはしてきたのです。
この手のかかるルーズな坊やのおかげで、オーサー氏は心の傷の痛みを感じている暇もなかったのではないでしょうか。とはいってもやはりふとした時に思い出したりすることもあったでしょうし、嫌でもその痛みを受け入れて歩き続けていかなくてはいけないのは、辛かったと思います。

自分の可能性に目覚めたハビエル君は自分のアパートを借り、きちんとスケジュールどおりの生活をするようになったそうなのですが・・・ってことはそれまでは女のアパートにでも転がり込んでたのかって聞きたくなりますよね。日本人選手みたいにプライベートまで厳しく管理されてがっちがちに縛られることはスペイン人選手にはないでしょうから、まあそれもありでしょうか。
フィギュアスケート選手としてだけでなく、一人の人間として、人間らしい生活を送ることが可能って素晴らしいことだなと思います。恋をして、笑って泣いて・・・・。有名人の交際が発覚したらすぐに「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」とプレスリリースを出さなくてはならない日本って、やっぱり息苦しいんじゃないかなぁ。謝る必要ないべ。

だけどこんな風にハビエル君がやんちゃをしていられるのも、母国スペインでのフィギュアスケートへの注目度がそれほど高くないうちだけかもしれません。12日から始まるグランプリファイナルは、スペインのバルセロナで行われます。地元の注目は自国選手であるハビエル君に集まるでしょうから、そしたら生活が一変してしまうかもしれませんね。

チーム・ブライアン

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