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マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

「チーム・ブライアン」の行間を読む (3)羽生結弦選手の最大の敵



羽生結弦選手の最大の敵、それは己のナルシシズムでしょう。
「いつも最大限の力を出して、かっこいいところを見せたい!」


コーチのブライアン・オーサー氏は著書の中で何度もそのナルシシズムを他の優しい表現に置き換えて言及していて、それをコントロールできるようになることが羽生選手には必要だといっています。
おそらく羽生選手本人にそのことを伝える時も、ナルシシズムという単語を避けて彼のプライドを傷つけないようにうまく伝えているのだろうと思うと、彼は優れた指導者であるだけでなく、賢く温かい人なのだとわかります。



平昌五輪を迎える頃には羽生選手も23歳。きっとうまくコントロールできるようになっているはずです。そしてそれは彼の演技をより一層洗練されたものにしていくでしょう。
以前アイスショーでジェフリー・バトルが振付けたFlo Ridaの"Club Can't Handle Me"を男性スケーター達がグループで滑ったのですが(残念ながら動画は削除されています)、衣装は皆Tシャツにジーンズ。ラフな格好でダンスミュージックにあわせて滑る彼らを見ていたら、スケーターとしてではなく、若い男の子としての彼らの素顔が垣間見えて楽しかったのです。だけど羽生選手はそこでも誰よりも上手く滑ろうという力みが感じられて、浮いていました。
一緒に滑っていた無良崇人選手の方がショーというお祭りを楽しみながら滑っている感じがして魅力的でした。競うことを忘れてお祭りを楽しむことも大切ですよね。ダンスナンバーなんて特にね。

こんな風に常に精一杯やっていると、結局いざ試合になった時に疲れきってしまっているとオーサー氏はいいます。試合に向けたピーキングの重要性は、キム・ヨナさんもよく理解していました。オーサー氏のもとで羽生選手もきちんとこれを理解し、エネルギーの配分や精神面のコンディショニングもきちんとできるようになるでしょう。そうすれば平昌の頂も見えてくる。

「これから平昌に向けて色々なタイプのプログラムを滑り、そして平昌で最も快適なスタイルに戻るのがいい」とオーサー氏はいいます。羽生選手好みのドラマチックな音楽など、同じスタイルのままの方が無難でジャンプも安全に決まるけれど・・・・

「今年や来年に最高の結果を出すには、それでもいいでしょう。しかし私は4年後のユヅルの幸せを考えたい。そうなるとこれからの3年は、無理をしてでも新しい持ち味を探す時期です。なれない雰囲気のプログラムのせいで、ジャンプをミスすることがあるかもしれません。
成績を出せない怖さは痛いほどわかりますが、同じスタイルをやり続け、平昌オリンピックのシーズンに『今年も同じようなことをやってるな』と思われる方がリスクが高いのです」


ほとんどのメディアはこのような長期的な視点ではなく、一試合単位でしか見てくれませんから、当然表面的な記事にインパクト重視の意地悪なヘッドラインをつけてアクセス数・部数を稼ごうとします。そういうメディアに対する苛立ちは髙橋大輔選手も著書で語っていました。 羽生選手も今後その苛立ちを感じることになるでしょう。

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だけど彼はメディアや彼らの発信することに心を折られることなく、乗り越えていくでしょう。なぜなら彼とチーム・ブライアンは同じ方向=最終目的地を見ているから、メディアに足を引っ張られている場合ではないのです。今後酷評されることがあっても、チーム・ブライアンは黙って「後から見てろよ」と平昌に向けて歩み続けるのみです。
オーサー氏は羽生選手がソチ五輪で獲得した金メダルに満足していないことを知っています。
ソチ五輪は初の団体戦(←ほんといらないよねこれ)や他の競技との兼ね合いもあり、男子のスケジュールはハードでした。そのため皆、正念場であるフリーが始まる頃には疲れきっていて、本来持っている力を100%出し切れた男子選手はいない中での金メダルなのですから、羽生選手が満足していないのは当然でしょう。
だからこそ平昌では彼が心から喜べる演技で金メダルをとらせてやりたいというのがオーサー氏の願いであり、チーム・ブライアンのミッションなのです。

「もっともっと笑顔のある祝勝会は、次のオリンピックまでとっておきます。今度は盛大にやりますよ。ユヅルも成人になるので一緒にお酒を飲めますしね。何よりもユヅルには、もっと感動的なオリンピックを経験させてあげたいと、心から願っています」

チーム・ブライアン

この色で表示されている部分は「チーム・ブライアン」の終章・「ソチオリンピック後、未来へ」より引用・転載しました


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