マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

暗闇に光を差し込んでくれたのは岡山県の緑でした

Dragon Ashのラップみたいなタイトルになってしまいましたが、知事が「岡山に来たことを後悔させてやる」と発言し何かと注目を浴びた岡山県での思い出をシェアしたいと思います。


まだ筆者が20代の頃ですが、転職して半年くらい経った頃、新人のためのフォローアップ研修が行われたのが岡山県でした。入社直後の新人研修以上に気が重く、新幹線に乗っている間は岡山駅に永遠に到着しないでほしいと願っていたほどです。
岡山駅で参加者が集合し数台のバスに分かれて研修施設を目指しました。しばらく走ると昭和のまま時が止まったような商店街に入っていき「この先バスは入って行けるのか?」と心配になるほど狭い道を走り、山の方へと続くそのうねった狭い道を走り続けるバスの中で、10年ぶりくらいに乗り物酔いするかと思うほどでした。ところがその気分の悪さがすぅっと引いていくような光景が目の前に広がったのです。いよいよ山の中に入っていくというその時、同じバスに乗っていた社員達が皆一瞬わぁっと窓の外の光景に感嘆の声をあげるほど、美しい緑の世界が見えてきました。
瀬戸内海沿岸の地域といえば日照時間が長いところが多いため、それでこの緑色が生れたのか、と一人で勝手に納得したくなる色でした。川辺に降りてこの緑に見守られながら釣りを楽しみ、よく冷えたラムネなど飲んで過ごす夏など、小学生の時に絵日記に夏を描くために使った緑を彷彿とさせる色。その緑の中をどのくらい走ったのかは覚えていませんが、かなり走ったと思います。
そして研修施設につきました。エントランスは広々としており、入ってすぐのロビーは吹き抜けでとても解放感があって、確か全面ガラス張りで、目と心に優しいあの緑色が太陽の光とともに注ぎ込んでくるようでした。ふさぎ込んでいた気持ちが嘘のように軽くなり、目の前が明るくなったような気持ちになったのです。
研修の日程がハードであることには変わりありませんでしたが、翌朝は早く起きてあの緑を眺めるためにロビーに行くと、もうコーヒーができあがっていました。そのコーヒーをいただきながらぼうっと外を眺めていると、あと一週間ここにいたいとすら思いました。まだ二日目なのに(笑)。まだ朝の6時くらいなのに、もうコーヒーを淹れて出してくれている人がいる。そう思うとなんだか救われたのです。
当時自覚はしていなかったのですが、今思えばあの頃の私はうつ病を患っていたのでしょう。仕事を家に持ち帰らないようにするために遅くまで会社に残り、眠る前には「明日の朝出勤したらあれとこれと・・・」と考えると動悸が激しくなり眠れない夜が続きました。親しい人達とたまにあっても仕事の愚痴しか出てこないことに気がつき、嫌われたくなくて距離を置くようになったのもあの頃です。いつも時間に追われていたあの日々。そしてその仕事を辞めた後でも2年くらいは当時の夢を見てうなされたほどでしたし「辞めるなら早い方がいい」と考え、今後のことについては白紙のまま臨んだフォローアップ研修で「もうちょっと頑張れそう」と私は踏みとどまることを決めたのです。そのくらい岡山県の山々の緑のヒーリング効果は大きかった。暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようでした。
残念ながら研修に使った施設の名前が思い出せず、グーグルマップでそれらしきものはないか探してみましたが見当たりません。睡眠時間もまともにとれず、ノルマ達成どころか日々の業務をこなすのが精いっぱいで、生れてはじめて生理が止まるという経験をした私にとっては、あの施設で過ごした数日間はリハビリ施設にいるようでした。
心身ともに健康な今だからこそ、再びあの緑を見に岡山に行きたいものです。このコロナ感染の恐れが完全になくなった暁には・・・・。