ツイッターでもおすすめした本です。
母親に3歳で捨てられ、父親に5歳で殴り殺されそうになったティム。その後、彼は障害を負ったまま、2年半の闘病生活を送る。だが10歳で心優しい養父母と出会い、ようやく心の平穏を取り戻す。
しかし幸せな日々は長くは続かなかった。養父の甥に放火の罪を着せられ少年院に送られてしまう。
過酷ないじめ。脱走を決意した12歳の誕生日。二人の若者にこえをかけられ、男娼となった13歳。
だが、ティムは変わろうとする。
本書の救いは、子供なら誰もが注がれるべき愛情はまったく注がれず、心身ともにひどく傷つけられた著者が、愛を見つけたことです。
「3歳の可愛い盛りの子供にここまでできる人間がいるのか」と思うようなことの羅列で、そんな両親にですら「抱きしめて欲しい」と願った幼い著者。これは書きながら苦しんだんじゃないかなぁ。現在は愛される喜び、愛を与える喜びを知ったとはいえ、本書を執筆するにあたり思い出す=虐待されていた頃の苦しみや痛みと向かい合うのは、容易なことではなかったはずです。
両親の虐待によって傷ついた心は、収容された先の施設でも再び傷つけられるのです。
施設には、そこにいる子供達を養子にしようという人々が訪れるのですが「容姿が可愛い子からもらわれていく」という事実が、幼い著者を深く傷つけました。
虐待により鼻を折られ、愛情を知らないがゆえに「子供らしい可愛らしさ」とは程遠い外見だったであろう著者にとって、これは辛かったと思います。
両親の暴力から逃れたと思ったら、ここでも傷つけられたわけです。肉体を傷つけられる痛みとどちらが深いか、ということは、本人にしかわかりません。
そして大人になり神を信じる人々と出会い、神に出会います。そして素晴らしい女性と出会って結婚するのですが、二人の結婚式だか婚約パーティーのエピソードで、ぐさっときた部分があります。
それにしても、誰もがこう言うのにはいささかまいった。
「こんなすてきな女性と結婚できて、本当によかったわねえ!」
ありがとう。でも、ひとりくらい逆のことを言ってくれてもいいのに・・・。
たった2,3行の記述でしたが、人間の残酷さが詰め込まれていました。
この本を読み終えた当時、二人の同僚に貸したのですが、そのうちの一人に私がこの部分を読んで「人間ってこういう風に気がつかないうちにひどいことを言っているんだよね」と言ったところ、「でもその女の人に出会えて彼がラッキーだったのは本当のことだよね」と言われ、ああこの人とは話していてもわかりあえないなと思ったことがあります。
フランス語はボンジュールとマドモアゼルしかわからない私ですが、彼の講演が逐次通訳付で行われたら、聴きに行きたいなあ。
◆著者近影:tim guenard - Google 検索