せつなく美しい恋愛小説の短編集 藤堂志津子著 「かそけき音の」


「とてもじゃないけどハッピーエンドの小説を読める精神状態じゃない。だけど何か心に染み入るような恋愛小説を読みたい」という人におすすめです。ページ数も少ないのであっという間に読みきれます。

「なんでそこで自分を犠牲にしてしまうの?だからあなたは幸せになれないのよ!」
とつっこみたくなる箇所多数。
私の身近で不義理を繰り返している人がいます。彼女はそれをする度に反省の気持ちを口にするけれど、その後も相手こそ違えど同じようなことを繰り返しているということは、やはり岐路に立たされたら自分の幸せを第一に考えているのです。
人間なんて誰だって自分が一番可愛いから、誰もが彼女と同じ一面を持っているといえます。ここだけは譲れない!というところは、絶対に譲るべきではなく、貫くべき時があります。
だけどこの本の短編集に出てくるヒロイン達は、最後の最後で「ここで自分のことを最優先に考えたら幸せになれるよ」というところで、身を引いてしまうのです。
あとは実らぬ恋において引き際が美しいなぁと思いました。

かそけき音の (集英社文庫)

 

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