「とにかく女子高校生を眺めていたかったのです」


私がまだ小学生の頃、お台所の北側の窓を開けると見えたのは田園風景、そしてその向こうには高校でした。多くの運動部が思う存分練習しても余裕がある大きなグラウンドで汗を流す高校生達の声も聞こえてきました。
そして東側の窓の外に見えたものは団地に続く農道と、そこにいつも停まっている不審な車両。交通量が少ない農道ですからほぼ毎日、一日中停車していても誰の迷惑にもなりませんが、私の両親は気味悪く感じていました。

「まあ・・・今日はうちの畑の脇に停まってる」
母は観察を続け、このように不審車両が時々移動することも発見しました。だけどわずかに移動しても決して我が家からは離れない。家族全員で我が家がターゲットだと思い始めていました。
その不審車両に乗っていたのは当時の私の目から見て20代後半くらいの青年でした。青白くて顔立ちのはっきりした、くせ毛で根暗そうな風貌。私が自分のことを見ていることなど一向に気が付きませんでした。なぜなら不審者はいつも田んぼの方をぼぅっと見ていたから。
しばらくするとこの車をぱったりと見なくなりました。そしてその車のことをすっかり忘れた頃、母がその車に乗っていた男性の話をし始めました。
「ねえ、あなたあのあやしい車覚えてる?いつもそこに停まっていた車。あの人ね、警察に捕まったんだって」
何をやって捕まったのかは教えてもらえませんでしたが、母はこう続けました。
「農道に一日中車を停めて何をしていたと思う?女子高校生をずっと見ていたんだって。それだけが楽しみで、でも同居する両親は仕事に行っているとばかり思っていたみたい」

本当はグラウンドにもっと近づいてフェンス越しに眺めていたかったことでしょう。だけど水田をいくつか挟んだところから眺めていた方が、高校生達に怪しまれることなく遠慮なくじっと眺めていられます。だから我が家の近くに停車していたのです。

 

同じように田舎に暮らす方々へ。敵は学校付近だけではなくこんな風に少し離れたところにもいますので、お気を付けください。

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