「出る」と言われていた峠。乗せてしまったと気がついたのは、峠を越えた後でした

今週のお題「ゾクッとする話」


母から聞いた話です。

母方の祖母が介護施設に入所して、初めて面会に行く日のことでした。私の実家からですと、S峠を越えていくのが近道だったため、母はそこを通って介護施設に向かって車を走らせていました。
すると往路で不思議なことがありました。S峠に差し掛かった途端、スピードが出ないのです。アクセルを踏んでも踏んでも、スピードが出ない。
その時は大して気に留めなかった母ですが、もしかしたら既に往路で「乗せて」しまっていたのかもしれません。

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photo by Dru!


祖母を見舞った母は、帰りも往路と同じ道を走りました。そう、S峠を通ったのです。そして夕食の買い物に行くために地元のスーパーに寄り、いつもならさっさと買い物だけして帰るはずなのに、この日はなぜか時間もたいしてないのに「図書館に行こう」と思ったそうです。
母はスーパーの駐車場に車を停めたまま、図書館に向かいました。そして青信号の横断歩道を渡り始めた時、急に後ろからがっと肩をつかまれたのです。

振り返ろうと思っても、体が動かない、声も出ない。
すると青信号が点滅し始めました。それを見て恐ろしくなった母が身の危険を感じ、もうだめだ、と思った瞬間、ぱっとその手が離れたそうです。

いったい何だったのだろうと思いながらも、霊感が強いため、今まで何度も恐ろしい思いをしてきた母は「またおかしなものに絡まれちゃったわ」とすぐに落ち着きを取り戻したそうです。
そして図書館に行き、雑誌のコーナーに行きました。そして何気なくタウン誌を手に取り、ぱらぱらとめくりながら美味しいお店をチェックしていたら、S峠の文字が目に留まりました。
そこに書かれていた内容を読んで、母は横断歩道で自分の身になぜああいったことが起こったのかを知ることになりました。

そのタウン誌には「S峠には霊が出る」というような投稿がいくつかあり、全て読んでみると、それらを投稿した人達は、母よりももっと恐ろしい思いをしていたとのことです。
スーパーの駐車場に戻る際、同じ横断歩道を渡っても先ほどのような恐ろしい思いはしなかったけれど、車に戻るとまだ霊が乗っているのではないかと気になってしかたがなかったそうです。

なぜよりによってS峠を通った日に、図書館に行こうと思ったのか。
そしてなぜ図書館でたまたま手に取ったタウン誌にS峠のことが書かれていたのか。
それは霊感の強い母にもわかりません。