極寒のノルウェーを舞台にした心温まる映画「キッチンストーリー」

北欧に行ったことがない私は、行ったことがないからこそ幻想を抱いています。

長く厳しい冬を少しでも暖かく演出するために、キャンドルや間接照明が充実しているのではないか、とか、素朴でありながらスカンジナビア半島の豊かな自然を思わせる優しく深い色使いを基調とした雑貨やインテリアが多いのではないか、など。
その幻想はノルウェー映画「キッチンストーリー」を見て以来どんどん膨らみ続けています。

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キッチンストーリーのあらすじ

1950年、スウェーデンの家庭研究所では、ノルウェーの独身男性の台所での行動パターンの調査を行うことになった。調査員のフォルケは、老年の独身男性イザック宅へ。調査対象とは決して話をしてはいけないという規則だったが、ふたりいつしか話をするようになり、ゆっくりと交流を温めていく

(Amazonから引用)

要するにどこにでもいそうな田舎のおじさん宅を訪れた、これまたおじさん調査員との友情のお話ですから、ええ体をしたにいちゃんもねえちゃんも出てこない地味な映画です。だけど惹きつけられます。おそらくこれもご縁なのでしょうか。じんわり芯から温まる映画に巡り合えたと思える作品です。極寒のノルウェーを舞台にゆったりと流れるストーリーは、老年男性同士の友情を中心に進んでいきます。

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老年の男性が一人でひっそりと暮らす小さな家。

キッチンの壁や小物の色合いが素敵でしょう。同じ北欧のアイスランドもこんな感じなんじゃないかなぁと想像しました。

その日最後の食事を終えて自室に戻る時、調査員フォルケがキッチンにまだいるのに平気で電気を消すイザック。

フォルケはただ自分の仕事をしているだけであって、彼にに罪はないと頭ではわかっていても、やはり最初のうちは調査されることをイザックは疎ましく感じていたことでしょう。
だけど少しずつお互いに打ち解けて「いいやつじゃないか」と自然と歩み寄るようになります。ただしこれはフォルケの仕事上好ましくはありませんでした。なぜなら調査対象者と調査員は決して話をしてはいけないという規則だからです。

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お互いに知り合うまでは、毎日を淡々と過ごしていたであろうフォルケとイザック。仲良くなってからは、いつもとたいして変わらぬ食事やコーヒーも楽しさ2倍。
話題を頑張って探さなくても、話が尽きない。静かで、同じ周波数にいる者同士でのみ交わせる会話にしか漂わない心地よさが感じられます。互いを思いやる姿もちっとも押し付けがましくなくていい。

 

きちんとドレスアップしてイザックのお誕生日を祝う二人。微笑ましい。

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どこかへ出かけて祝うわけでもなく、イザックの質素な住まいでお祝いしましたが、ドレスアップしたことで、フォルケにとってイザックの誕生日がいかに特別な日かがわかりますね。

(四枚目の画像は Movies at HARO Online - Kitchen Storiesからお借りしました)


今の季節に見るよりも、寒くなってから見た方が心に染み入るストーリーです。静かだけど響く。モテとか愛されとか、そういう打算だらけの世の中になってしまったからこそ、こういう映画が染み入ります。

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