「気持ちが下降気味」と言った浅田真央選手の燃料タンクの残量が気になる

 

羽毛のように軽いジャンプが戻ってきたと思ったら、スランプに突入してしまった浅田真央選手。全日本のSPを見ていた時、ソチ五輪のSPの悪夢が頭をよぎりましたが、最後の3ループを綺麗に決めたのを見て安心しました。
多くの女子選手が3フリップ/ルッツー3トゥループという連続三回転を得点源としてプログラムに組み込み、高い成功率を維持している中、浅田選手は諸刃の剣とも言える3Aに加え、連続三回転ジャンプは、二つ目のジャンプに3トゥよりも難易度が高く認定されにくい3ループを持ってくるコンボを選びました。諸刃の剣が二本に増えたような構成です。

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「試合が恋しくなった」

そう言って、この剣を携えてリンクに戻ってきたわけですが、全日本SP終了後のインタビューでは「気持ちが下降気味」とのこと。シーズン序盤あたりの「わくわく」はどこへ行ってしまったのでしょうか。

 

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燃え尽きた後の、かつての勢いのないキム・ヨナ選手の引き際を思い出してみる

比べているわけではなく、浅田選手もこうだったらいいなと思って書いています。
バンクーバー五輪で圧倒的に完成された、美しい演技をして金メダルを取った後、「目標は全て達成した」と言っていたキム・ヨナ選手。その後休養を経てソチ五輪に照準を合わせてきました。
「もう金メダルは目指していない。ただいい演技がしたい」といったキム選手の言葉に嘘はないと思いました。なぜならそういった彼女にはもうかつてのような、女王の座を目指していた時の攻めているオーラがまったく感じられなかったからです。

女王の座に座り、夢にまで見た五輪の頂から見た風景。
それを見てしまったら、もう何を見てもかつてのような闘志を取り戻すことはできないでしょう。
前五輪の金メダリストという重圧をはねのけて、ソチ五輪では相変わらずの安定した演技で銀メダルを獲得しましたが、「相変わらずの安定した演技」をすることがどれほど大変なことなのか、これは現役で戦ったことがあるスケーターにしかわからないはずです。
バンクーバー五輪後は完全に燃えカスしか残っていなかったであろうという精神状態から、ソチまでのいくつかの国際大会、そしてソチ五輪であれだけの演技ができるというのは、並大抵の強さでは考えられないことです。

不完全燃焼だからリンクに戻ってきたのか

燃えカスしか残っておらず、なんとか燃料補給しながらソチ五輪を銀メダルで終えたキム選手に対し、「今度こそ金メダルを」という思いを燃料に闘い続けた浅田選手のソチ五輪の結果は6位入賞でした。
そしてFSの後感極まって涙を流した浅田選手。そこには燃え尽きたという気持ちがあったのか、それともやり終えたという安堵があったのかはわかりません。両方、そしてそれ以外の様々な気持ちもあったことでしょう。

FSが渾身の演技として語り継がれましたが、五輪という舞台の表彰台の一番高いところに、バンクーバーに続いてソチでも立つことができなかったという悔いは浅田選手の心の中にもあったでしょう。それが燻り続けて浅田選手に復帰という選択をさせたのかもしれません。
バンクーバー五輪までの四年間、そしてソチ五輪までの四年間、とても重い燃料タンクを抱えて歩いてきた浅田選手。それぞれのタンクの重さも、そして歩んだ道の険しさも違うはずですが、一年間の休養は、もう一度タンクを満タンにして歩いてみようという覚悟と気力を取り戻すのに十分だったのか、あるいは今シーズンの世界選手権を最後に現役引退という選択もあるのか・・・、気になるところです。

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