ピラミッドの頂点にいる淑女達



知人男性Rさんから聞いたお話です。
Rさんは昔ラーメン屋をしていて、芸能人の別荘も立ち並ぶ高級住宅地のお客様のところまで出前に行くこともあったそうです。
ある日お金持ちのお宅に空いた器を取りに寄ったところスープが入ったままどんと置かれていました。Rさんはこういう時、しようがねぇなぁといって自分で捨てて回収するような人ではありませんでした。

「ちょっとすみませーん!!!」

インターホンを押してマダムを呼び出しました。
そして洗わなくてもいいから、せめてスープを捨てて外においてもらえませんか?といったところ、そのマダムは「わかりました」と言って、外へ出てきたと思ったら、なんと玄関前においてあったそのスープ入りの器を、庭を駆け回っている犬のところまで持っていって、犬にスープを飲ませたのです。

「これでいいのかしら?」

呆れ返ったRさんは、後日このマダムから出前の注文の電話があった際「もうお宅の注文は受けませんから」といったら「なんですって!?いいわ。この話をいいふらしてあんたの店なんてひねりつぶしてやる!!!」と言ってマダムは電話を切りました。
その直後、やはりそのマダムは根も葉もない下世話な噂話みたいなものを広めたようですが、Rさんの商売にはなんの支障もありませんでした。そりゃあそうですよね。そのみんなそのマダムがどんな人なのか、もうわかっているのでしょう。

Rさんは言いました。
「いやあ、あそこらへんに暮らしているマダムでもさあ、上には上がいて、一番上まで行くとやっぱり俺みたいな下々の人間に対しても丁寧なんだよ。スープを犬に飲ませたババァみたいなやつはきっと中途半端なところにいるやつなんだろうね」

ピラミッドの底辺の方にいる私でも、それは想像できました。
ピラミッドの頂点にいる本物の淑女・・・・そう聞いて思い出すのは酒井美意子さん

どんなに裕福な家庭の子女でも「所詮平民」と見下しているような、選民意識がところどころ感じられて鼻につきましたが、華族となればそうなってしまうのも当然でしょう。本当の贅沢に散々触れて育つことができたのだって、誰のおかげだと思っているの?(=税金だろ)と思わずにはいられないほどの贅沢ぶりです。
昭和天皇の第一皇女・照宮成子内親王のお手つなぎ係になった時の誇らしげな様子を読んでいると、自分達華族の上に存在する唯一の階級である皇族は特別だったのだなぁと思いました。

著書である ある華族の昭和史―上流社会の明暗を見た女の記録を読んだ時、なんかもう格が違うというか、彼女の子孫は絶対に自ら「セレブでーす♪」などと言って表にでは出てこない人達なのだろうと思いました。

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