知人から送られてくる年賀状に、本人やその配偶者は写っていなくて、その人の子供だけが写っていると、正直言って差出人を見ないと誰からの年賀状なのかもはやわかりません。だから私にとっては結構微妙なものなのですが、それよりももっと微妙なものがあります。
それは自分が写っていない写真の購入を勧められること。
photo by Len Radin
私に写真の購入を勧めた来たのはアメリカ人の知人トレイシーでした。
彼女は見ていて気持ちいいくらい「自分万歳!」の人です。それは以前からわかっていたことですが、驚いたのは彼女の結婚式のあとのことでした。
それほど仲良くもないのに招かれた私は、はるばる太平洋を越えてまで参列する気も金もありませんでしたから、当然欠席しましたよ。
だけど彼女達がハネムーンから帰ってきた後、フォトスタジオから同胞メールが来ていました。件名にトレイシーのフルネームが入っていなかったら、そのメールを開封すらしなかったでしょう。
そのメールには彼女の結婚式のアルバムが添付されていて、自分が好きな写真を選んで購入できるようになっていました。
彼女がきっとうっかりしてアドレス帳をまるごとスタジオ側に渡したから、参列していない私にも送られてきただけなのだろうな、とその時は思いました。ところがそうではなかったのです。
2週間くらいたったある日、トレイシーからメールが来ました。
「あなたはまだ写真の購入の申し込みをしていないけれど、大丈夫?締め切りはもうすぐよ」
彼女の自分万歳キャラを熟知していた私は、やんわり断っても決して伝わらないこともわかっていましたから、はっきり断ることにしました。
「トレイシー、声をかけてくれてありがとう。私は参列していないからいいわ」
自分や夫が写っているわけではないから要らないわ、という意図は、さすがのトレイシーにも伝わったようでした。
「私の人生の節目の大切な写真よ。あなたも欲しいでしょ?」と思えるそのおめでたさは、鈍感力と並んでこの地球で暮らしている女性達が少しおすそわけしてもらった方がよい資質です。