私の昭和史(2)豚が消えた

 
私の実家から徒歩2,3分のところに小さな豚小屋がありました。
そこで飼育されていた豚は50頭くらいで、入り口から覗くと一斉に皆がこちらを見てぎゃーぎゃー騒ぎ出すので、小学生だった私は度胸試しみたいな感じで時々こっそり小屋の中を覗いていたのです。

「なんで牛乳は売っているのに、豚乳は売っていないのか」

そんな質問を両親にしても、答えは返ってきませんでした。彼らは気に留めたこともなかったようです。
田舎には娯楽がありません。大人にとっても、子供にとってもです。ですから自分達で娯楽を作り出すことになります。私は「豚小屋で度胸試し」に友達を誘うようになりました。誰が一番奥まで行って帰ってこられるか。

http://www.flickr.com/photos/80318385@N00/13906949681

photo by chuddlesworth


その娯楽にもすぐに飽きるわけですが、飽きる前のある日、ついに所有者の男性に見つかってしまいました。その時不運にも、私は豚小屋に入る番が回ってきていて、かなり奥まで入ってしまっていました。
逃げる友達、捕まる私。

だけどこの豚小屋も、私が中学生になる頃には豚が消えていました。

もう一つ思い出に残る豚小屋がありましたが、それはもっと大きくて豚舎と言った方がよさそうなものでした。
母の実家に行く時は、車で県道を延々と走るのですが、幼い頃その県道を走っていると、田園地帯の真ん中に二つの大きな豚小屋が見えて、県道からその豚舎までどう見ても1キロは離れているのに、豚舎の臭いが、窓を締め切っていても鼻をつくのです。
そしてその臭いが「おばあちゃんちまであと15分」の目安でもありました。だけどいつの日からか、この臭いもしなくなりました。ああ、豚がいなくなったんだな、と思いました。

あの頃は、今のように、スーパーで売られている食肉のパッケージに張られたシールの「国産」の印字が大きな力を持つ日が来るとは思ってもいませんでした。

関連記事:私の昭和史(1)携帯電話がなかった頃 - マリア様はお見通し



気になったことはなんでもググれる今の時代・・・ありがたや。

claimant.cocolog-nifty.com