私にとてもよくしてくれたアメリカ人の年配男性がいます。親切にしてもらっておきながら素晴らしい人、と言えないのは、彼が極右思想の持ち主だったからです。ブッシュ万歳!!!みたいな。そして「世界平和も大切だけど、平和すぎると軍需産業が衰退するからねえ・・・」と堂々と言ってしまうような人で、これには私も驚きました。
その方の自宅に立ち寄る機会がありました。私はこの方の奥様(日本人女性)にお会いできるのを楽しみにしていました。なぜならこの方は仕事を終えて家に帰るのが楽しみでしかたがないと毎日言っていたからです。
専業主婦の奥様が整えた、清潔で快適な家に帰り、美味しい夕食を食べながら、奥様と議論するのが飽きないのだそうです(夫婦共に五十代です)。
奥様は男性の話に聞いていた通りの可愛らしい方でした。そして「何十年繰り返しても飽きない議論」ができるだけの英語力とコミュニケーション力の秘密を知りたくて、私はリビングに備え付けてあった本棚に目をやりました。
するとそこにはおそらく日本語で読んでも私には理解できないであろう、イスラム教に関する分厚い洋書やら、政治関連の書籍、歴史小説が何十冊と置かれていました。
その本棚に置かれた書籍を見た時、なぜこの男性が奥様との議論を楽しみにしているのかわかりました。「アメリカが正義でイスラム教は悪」と決めつけているご主人に対し、彼女は正論で論破しようとしないのです。正論で攻めたところで馬耳東風であることくらいわかっているのでしょう。
イスラム教を理解し、歩み寄ることの大切さ、彼らのことを何も知らずに悪と決めつけることの愚かさを奥様が説いても、きっとご主人は心のどこかで認めつつ素直にそれを受け入れることができない。
「あなたの考えはおかしい」「間違えている」とは決して言わない。だけどそのイスラム教の本を自分が読んでいることによって、ご主人には「目を背け続けてはいけない真実がある」という無言のメッセージを送り続けているようなものです。
少しずつでいいから、ご主人が世界平和のことを考えてくれるようになったら、という奥様の願いが叶う日も遠くないかもしれません。
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