地雷は見えていても踏んでしまうものです


中村うさぎさんが「5時に夢中!」を降板された理由が、誤解から共演者の美保純さんとの関係が悪化して、それを修復しようとしたプロデューサーの言葉にも深く傷ついたから、ということだそうですね。
芸能ニュースの記事の信憑性についてはなんともいえません。誰かを悪者に見せるための情報操作なんて、マスメディアには赤子の腕をひねるようなものです。だけどこの誤解が本当にあったのだとしたら、地雷が埋まっている場所がわかっているのに踏んでしまう恐ろしさってあるんだなと思いました。

うちの近所にあるお店のオーナーがすごい髪型をしています。おそらく本人は一番自然に見えるかつらをつけているつもりなのだと思いますが、ギャグにしか見えません。時々マジックのようなもので描き足されている生え際も、きっと通販かなんかで「ばれない!雨でも落ちない!」と宣伝されていたのものを「これだ!」と思って買ったのでしょう。
店員さん達は皆さん淡々と働いています。店員同士目を合わせてくすくす笑うこともなく、すっかり慣れっこなのです。 このオーナーのように「俺の地雷はここだ!」と明らかにしてくれていれば、誰も踏まないのです。



だけど美保純さんのようにポルノ作品に出ていたことが本人にとってはコンプレックスであると、その地雷をよけることは難しいのです。
なぜなら周囲の人間が、それがコンプレックスだと知っていてどんなに気をつけて話しているつもりでも、「私が言ったそんな言葉がポルノ女優を連想させたの?」と驚くような些細なことが、本人にはポルノ女優だからこんなことを言われたのね・・・ととられてしまう可能性があるからです。
たとえばうちの父の場合ですと、私が高校生になったあたりから髪の毛が薄くなり始めて、そのことをとても気にしていました。あれは確実に遺伝するものですから、避けられない運命です。
ですから我が家ではそれを連想させる言葉は一切禁句でした。ハーゲンダッツも禁句だったくらいです。こういう風に周囲の人間が「あれも駄目らしいよ」「こんなことも言っちゃ駄目らしいよ」と情報を交換し、認識できていればいいのですが、お題がポルノ女優となるとそれが難しいのでしょう。
例えば「美保さんは素敵なランジェリーをつけていそう♪」と褒めてもご本人には「私がポルノ女優だったからそういってるの?」ととられるかもしれない。地雷が埋まっている場所に「地雷ワード一覧」を書いた立て看板を出したとしても、きっと人は地雷を踏み続けるのです。

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