コロナウィルス感染拡大の脅威がなくなったら行きたい場所をひたすら貼る(3)

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コロナウィルス感染拡大の脅威がなくなったら行きたい場所をひたすら貼る(2)

備忘録

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コロナウィルス感染拡大の脅威がなくなったら行きたい場所をひたすら貼る(1)

備忘録替わり

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自分が傷つけた相手を平気で同窓会に誘ってくる人の心境

今から3,4年前でしょうか。飯倉さん(仮名)という女性から急にFacebookで友達申請がありました。飯倉さんとは中学まで一緒でしたが、中学の時は彼女によく思われていないことを知っていましたから、筆者から彼女に話しかけることはまずなく、それ以来もうずっと話したこと顔を合わせたこともなかった関係にあった彼女が20年経ってから急にどうしたものかと思ったら、なんと同窓会へのお誘いでした。しかも彼女が幹事。すごい神経をしている人だなと思った理由を書きたいと思います。


飯倉さんと私は同じ中学に通いバレーボール部に所属していました。私はスタメン、飯倉さんはベンチにも入れませんでした。部員数がとにかく多かったのです。ですから最上級生になってもベンチ入りできない部員は大勢いました。思春期の子供たちに「腐るな」と言っても難しかったでしょうね。
飯倉さんは顧問の先生やスタメン達に呪詛を吐き続けることが趣味で、面と向かって吐く場合と陰でヒソヒソと吐く場合と両方あり、彼女を中心とした陰湿コミュニティが楽しくお話しているところにたまたま私が通りかかると「あ、きたきた」と言ってあからさまに話をやめることなど日常茶飯事でした。
飯倉さんの呪詛は、先輩が引退する直前に次期スタメンが決まったあたりから始まり、こつこつ地味な練習も苦にならずまじめに頑張っていた私は、その中でも最も標的にされたといってもおおげさではありませんでした。そのまじめさが鼻についたことくらいは、中学生の私にも想像はできました。

Caught


「引退するまでの1年の我慢。部活を引退すれば廊下で顔を合わせるくらいだからもうどうでもいいし♪」と自分に言い聞かせて耐え抜いた日々。その日々を水に流して一緒に呑みましょう!ということなのでしょう。だけどそれはあまりにも無神経だなと思いました。
ここから先は筆者の想像ですが、おそらく飯倉さんはお子さんが自分が呪詛マシーンと化していた年齢に成長し、部活動に熱中しきらきらし始めた頃なのではないでしょうか。練習の成果が思うように見えなかったり、壁を乗り越えようとしている子供の姿を見ていて、ふと「真面目にこつこつ頑張っていたマリア」を思い出した。そして子供というフィルターを通して部活動を見た時に「当時はあなたの気持ちなんてわからなかったけど、我が子が地味にこつこつと頑張っている姿を見て目が覚めたわ」という自分勝手さというか、「懐かしさ」というパズルを完成させるための一番大きなピースとして思いついたのが呪詛を放っていた相手である私でしかない。結局その懐かしさに浸って悦に入るんだろうなと思ったので、同窓会は当然断りました。

とりあえず友達申請は承認してみたので、彼女の近況は画像を通じてみることができたのですが、積極的に人と交流して楽しく生きようとしている感じに見られました。

ですからバレー部の同窓会もその一つでしかないのではないでしょうか。自己実現に必要なイベントの一つ。
歳をとってみて見えてくることは誰にでもありますから、「あの頃はひどいことをしたな」と思い返してみるのもどんどんやってほしいと思いますが、心の中にとどめておいていただけたらと思います。私には自分がひどいことをしたなと思った人に、20年の歳月を越えて連絡を取る気持ちにはなれません。それに仮に反省していたとしても、人間はそんなに簡単に変わらないと思います。人の心に踏み込むための土足は履きたくない。

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サイコパスやソシオパスと出会ってしまった悲運 (1)一見貴公子のようなソシオパス Martin MacNiell

悲劇は2007年4月、アメリカの末日生徒イエス・キリスト教会(通称モルモン教会)の総本山があるユタ州で起きました。
住民の多くがの同教会員でゆえに白人の数も比例して多い、とても保守的な環境で、家族愛(家父長制)を重んじる文化が根強く残る地で起きたことについて書いてきます。

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Photo courtesy of Utah doctor's life of lies unravels after some of his children are convinced he murdered their mother - ABC News


美男美女、幸せで完璧な夫婦。ソシオパス、Martin MacNiell(マーティン・マクニール 以下マーティン)が必要としていたのは、この幸せな夫婦像、家庭像だったのでしょう。心優しく貞淑で美しい妻の存在が輝かしいほど、その陰で彼が何をやっているのか気に留める人もいなかったはずですから。

 

 

恐ろしいサイコパスやソシオパスほど、出会った時の印象はよい

本当に恐ろしいソシオパスやサイコパスは、獲物を捕らえるまでは聖人に化けていますから、最初の警告が発せられたのが結婚した後だった=結婚したら聖人が仮面をとり、素顔を見せ始めて実は化け物だった・・・というケースも残念ながらあります。
サイコパスやソシオパスに捕まってしまった女性達の話にはいくつか共通点がありました。その一つが、邪悪な化け物ほど、見事な隠れ蓑を持っているということです。例えば入口がこんな風に不気味だったら、誰も近寄りません。

Heaven

ところが奥に進むほど暗く、恐ろしいトラップだらけの物件ほど、入り口はディズニーランドのようなのです。しかも彼らが獲物を見つけた時の瞬発力と集中力のすごさは異常です。だからこそ第一印象はすごくよい。奥にある闇が深いほど、入り口には光が必要なのでしょう。ではサイコパス、マーティンの光とは何だったのでしょうか?

 

同じ教えを信じ、熱心に教会に通うハンサムなエリート

カリフォルニアで生まれモデルをしていたMichele MacNiellさん(以下ミシェルさん)がマーティンに出会った時、彼女はユタ州にあるブリガムヤング大学に通っていました。モルモン教が運営している大学で、ここで教会員同士で知り合って学生結婚というのが同教会員にとってごくあたりまえでした。そして二人が出会ったのは、彼らが信仰していた同教会のお見合いパーティーのようなイベントでした。
モルモン教徒が結婚相手に求めるのはまず教会員であることです。異教徒や非教会員と結婚するケースはほぼないといってよいですから、出会って数ヶ月で二人が結婚を考え出したのは当然でしょう。モルモン教徒は、どこまでその教えを忠実に守るかということに関しては個人差こそあれど、婚前交渉は禁止されているのと幸せな家庭づくりに重きをおいているため、比較的皆早婚です。

Salt Lake Temple

話をマクニール夫妻に戻します。マーティンにしてみれば「美しく貞淑で、従順な妻」は自分の正体を隠して生き抜くためにも絶対に手に入れたいところでした。こうして「信仰に熱心なモルモン教徒」という光のまぶしさの中にミシェルさんは飛び込んでいきました。マーティンから拭い去れないあやしさや胡散臭さを嗅ぎ取ったミシェルさんの両親は、二人の結婚に反対しましたが、それでもミシェルさんはマーティンを選び、二人は駆け落ちしたのです。

マクニール夫妻の結婚生活

マクニール一家はユタ州のプレザントグローブという街で暮らしていました。ここは州都のベッドタウン且つゲートで守られた安全な居住区域で、ゆえに比較的裕福な層に人気があります。子供を持つ若いモルモン教徒の夫婦が住民の大半を占めていたようですが、そのコミュニティにこの美男美女が落ち着く前に、既にマクニール夫妻の結婚生活には暗い影が垂れ込めていたようです。なぜなら結婚後ほどなくすると、マーティンは詐欺の罪で投獄されたからです(後述)。マーティンにちらつく影、闇を見破っていたミシェルさんのご両親にしてみれば「言わんこっちゃない」と言いたくなったことでしょう。ところが刑務所から出てきた詐欺師マーティンは、その後医師、弁護士の資格を取得して経済的には何不自由のない生活を家族に与えました。
敬虔なモルモン教徒という仮面をかぶってハントした隠れ蓑ミシェルさんと結婚したマーティンは、5年間で四人の子供を作りました。もしかしてミシェルさんに対して性的虐待があったのではないかと思うほどのペースですが、大家族が多いモルモン教徒(現在は昔ほどではないかもしれません)ではこのくらいのペースで子供ができても珍しくはありません。
4人の子供は上からレイチェル、ヴァネッサ、アレクシス、ダミアン(ヴァネッサとアレクシスの順序が逆の可能性あり)、ウクライナからの三人の養子(のちにこのうちの一人を利用してマーティンは再び詐欺を働く)、そして次女ヴァネッサが若くして未婚のまま産んだ娘、エイダをマクニール夫妻の養女にし、合計で8人の子供がいました。

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Photo courtesy ofUtah doctor's life of lies unravels after some of his children are convinced he murdered their mother - ABC News


ウクライナ人の養子を迎えた理由は、実子達が成長したため。子は鎹と言いますが、手のかかる子供達に必要とされることでしか、もはやマクニール夫婦は一緒に生活していくことができなかったのでしょう。マーティンの不貞やポルノ動画を楽しんでいることが原因で諍いが絶えなかった夫妻も(ポルノへの興味は信仰の妨げになる)、幼い子供達の親としてなら一緒にい続けることができる。ミシェルさんは養子達にもあふれんばかりの愛情を注ぎました。ところがこの鎹をもってしても、もはやこのマクニール夫妻の夫婦関係は修復が不可能なところまで来ており、マーティンは口論になるたびに「自殺してやる」「離婚だ」とミシェルさんを脅しました。

 

近いうちに自分の夫に殺されることを確信しながら死んでいったミシェルさん

50歳になったあたりからマーティンが異様に外見に注意を払い始めました。ダイエットに励んだりタンニングサロンに通い始めたりした夫を見て、当然ミシェルさんは長年ともに暮らす自分のために夫が今更外見を磨こうとするわけがないことくらいわかりますから、マーティンを問い詰めました。すると彼は逆上し「だったら君も自分の外見にもっとかまったらどうなんだ?!」と美しいミシェルさんにフェイスリフトの手術を受けるように言いました。提案というよりは強要。
医師、弁護士の資格を持つ夫に対し、女性関係のことで口論しているとき以外はとても従順で、それは傍から見ても明らかだったというミシェルさんは、この時も夫の言うがままに「そうね、私もそろそろ美容外科手術のお世話にならないといけないかしら」と言いくるめられたのです。それで夫婦の仲が改善されるのであれば、という希望もあったことでしょう。総本山にある寺院で誓った愛を簡単には手放せないのが敬虔なモルモン教徒らしいともいえます。
術後はそばにいてサポートしてくれる人が必要だから、隣のネバダ州にある大学の医学部に通う三女のアレクシスが夏休みに帰ってきた時にでもお願いしようかしら、と美容整形手術を受けたことのない天然美人であるミシェルさんは言ったのに、マーティンは夏休みなど待たずにアレクシスさんの春休みにあわせてすぐに手術を受けるよう、ミシェルさんを強引に説得したのです。
この時はまだミシェルさんは自分が夫に殺されるとは思っていませんでしたが、フェイスリフトの手術を終えて帰宅すると、彼女は自分がおそらく近々夫の手によって殺されることを感づくことになってしまいました。

マーティンはミシェルさんの美容整形手術を行った医師に5種類の中枢神経抑制薬を処方するよう求めました。この医師はマーティン自身も医師であることを知っていたため、彼を信頼してその5種類を処方したのですが、実はこれらは決して同時に服用してはならない類の薬でした
手術を終えて帰宅し、痛みに耐えていたミシェルさんの介抱を最初にしていたのは、マーティンでした。ところが、処方された薬の与え方を中心にマーティンの行動がどうみてもおかしいことに気が付いた三女のアレクシスさん(医学部は春休みで帰省中)は、自分の父親であるマーティンに向かって「私がここにいる間は、お父さんに代わってお母さんのお世話をします」と申し出ました。
ミシェルさんはアレクシスさんと二人きりになると、アレクシスさんに泣きながらこう言ったのです。

「もしも私の身に何かあったら、あなたのお父さんを調べてね」

また、手術直後でまだ顔の大部分が包帯などで保護されていたミシェルさんは、自分の目で薬を確認することができませんでした。そのためアレクシスさんにすべての薬を自分の手に乗せてもらい、どれがどの薬なのか説明してもらい、手に触れた触覚で覚えておこうとしました。アレクシスさんがネバダ州の大学に戻ってしまった後、マーティンがおかしなものを混ぜて飲ませようとしたり、あるいは過剰摂取させようとしたらすぐに自分でわかるように。そしてミシェルさんの予感は的中してしまいました。
術後から8日目の2007年4月11日、ミシェルさんはバスタブで息絶えているところを娘のエイダちゃん(実際は夫妻の孫にあたる)に発見されるのです。この日マーティンはエイダちゃんをプリスクール(か小学校)に迎えに行き自宅に戻ると、まずは彼女に「お母さんの様子を見てきなさい」と言いました。第一発見者は疑われやすいということを知っていて、自分が第一発見者になることを避けるかのように。その後ひどく取り乱した様子を装って911に電話し、何度かアクシデントを装って自分から電話を途中で切ってしまうということまでやったマーティン。当然その行為は救急車の到着を遅らせました。そして救急隊員が到着すると、さらに彼の臭い演技は白熱しました。
マーティンは「だから美容整形手術なんて受けるなとあれほど言ったのに!!」と繰り返し叫んで見せたのです。中枢神経抑制薬を使って殺す計画をしていたことがばれると困るからでしょうが、こんな演技で人々を騙せると思ったら大間違いです。少なくとも自分の娘達は真実を知っていました。


マーティンと同じくらい薄気味悪い愛人 ジプシー・ウィリス

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「俺は歳をとった美人より若い不美人がいいんだ」
という理由でマーティンがこの女性に走ったわけではありません。おそらくマーティンは自分と同じものを彼女から嗅ぎつけたのではないでしょうか。同じ芽を持つ者同士にしかわからないようなものを。

マーティンが50歳になったあたりから体を鍛えたりし始めたのは、このお世辞にも美人とはいえないジプシー・ウィリスという愛人のためでした。ミシェルさんの美容整形手術が、彼女により美しくなってほしいからではなく、最初から処方される薬を使ってミシェルさんを殺すことが目的だったとしか思えないと証明してしまったのが、皮肉なことに、この愛人ジプシーの存在なのです。

「マーティンはリンカーンからフォードへ乗り換えた」
「素晴らしい熟成したワインを捨ててまで腐ったチェダーチーズを手に入れようとした男」

YouTubeでこの事件の関連動画をチェックしていると、コメント欄ではジプシーとミシェルさんの外見を比べて「なぜミシェルのような美しく優しい妻がいながら、ジプシーのような不美人に・・・」という内容を比喩した上記のようなコメントが多く見受けられました。とにかくジプシーを見れば、マーティンが女性を選ぶのに美醜にそれほどこだわっていなかったことはわかります。だったらなぜミシェルさんにフェイスリフトをするよう強要したのか・・・理由は一つしか考えられません。


筆者はジプシーのインタビューや、彼女の法廷での証言を聞けば聞くほど、彼女とマーティンは出会うべくして出会った、最凶のソウルメイト同士だとしか思えないのです。お互いとても大切なものが欠落していて、二人ともそれを持っていないため補えないんだけど、だからこそ居心地がよい。

社会的な信用・評価への近道を走るために美しく貞淑なミシェルさんと結婚するも、自分と同じくらい自己中心的で本人ですら気づかない重大な欠陥のあるジプシーとの出会いこそが、彼にとっての運命の出会いだった。
例えばミシェルさんの葬儀に呼ばれてもいないのに参列するジプシー。なぜ参列したのかとトークショーで訪ねられると「そこにいた誰も私が誰なのかなんて知りませんでした。ミシェルさんに敬意を払うために参列しました」と答えた瞬間、観客はざわつきました。当然ですね。そして彼女はこう続けました。

「マクニール一家が可哀そうだと思ったし、マーティンを支えるために参列しました」

この発言を聞き、筆者の中でマーティンとジプシーの二人は、ソシオパスとサイコパスのベストカップル賞に決定しました。葬儀の日、ジプシーはマーティンに30件ものテキストメッセージを送っています。

「いつものようにしてみただけです。時間があれば連絡をとることは私達にとって日課だったから、テキストした方がいいかなって思ったのです」


「ミシェルさんが埋葬された翌日に自分の裸の後ろ姿の画像をマーティンに送ったのは、気晴らしになればいいかなって思ったから」

救急隊の前で白々しい芝居をして見せたマーティン同様、この女もまともじゃないと思いました。

さらに埋葬から9日後、ジプシーはマクニール家に住み込みの子守としてやってくるのです。マーティンは彼女をジプシーと紹介せずにミドルネームのジリアンで紹介し、「面接に来たのが一人だけだったから彼女に決めた」と見え透いた嘘までつきました。ちなみにジプシーを面接したのはマーティンと娘のヴァネッサ、そして息子ダミアン。ミシェルさんの死は自然死ではなく、マーティンの犯行によるものだと当初から疑っていた長女、三女をボードから外しての面接というわけです。
三女のアレクシスさんがジプシーが住み込むことに反対すると「医学部の学費はもう出さないぞ。おまえはこれで退学だな」と脅すマーティン。マーティンにとって娘達よりも大切な女性、ジプシーには学資ローンや滞納した税金といった7万ドルくらいの借金もありましたが、それも金のこととなると悪知恵のはたらくマーティンです。ウクライナ人養女の一人であるジゼルを「ウクライナで夏休みを楽しんでおいで」と追い出して、ジゼルのIDを愛人であるジプシーに使わせて金銭工作を謀ったのです。

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(ウクライナに送り返されたジゼルちゃん)

 

自然死としてあっさり解決してしまった警察と、娘達の話を聞こうとしなかったマスコミ

ミシェルさんの死は事件性がないと判断されてあっさり終わりました。警察は証拠を収集して詳しく調べることもなく、その一件をさっさと解決済みとしてしまったのです。しかし娘達はあきらめず、新聞社などに話を持ち込みましたが残念ながらそこはユタ州です・・・。人口のほとんどがモルモン教徒であり家父長制が根強く支持されるユタ州では、このようなスキャンダルはもみ消したかったのでしょう。特に教会の支部長のようなポストを二度も務め、同教会のサンデースクールでも教えを説いていたマーティンのスキャンダルであればなおさらですし、彼は教会へ寄進していた金額もかなり大きかったことも想像されます。モルモン教徒にとってのメッカ、ソルトレイクシティのベッドタウンで起きたこの一件に関しては「逃げ切れる」とペテン師マーティンは踏んだのでしょう。だけど娘達(主に長女レイチェルと三女アレクシス)とミシェルさんの姉妹達のミシェルさんへの愛を侮るべきではありませんでした。

彼女達は州議会の議員に陳情し、たどり着いたのがダグ・ウィットニー氏とジェフ・ロビンソン氏でした。彼らは特殊な事件のみを扱う捜査官です。そしてダグ・ウィットニー氏が捜査を始めるととんでもないことが明らかになりました。それはサイコパスマーティンの半生が嘘で塗り固められていることでした。

ペテン師マクニールの嘘で塗り固められた人生

マーティンのペテン師としての人生は陸軍に入隊した17歳時から始まりました。2年陸軍に所属しましたが、自分は統合失調症で幻聴等の症状もあると主張し、医学的に見てこれ以上軍にとどまって働くことが危険であるとの判断(そんな疾患のある人間に武器を持たせるわけにはいきませんから)を勝ち取って除隊後は、この(虚偽の)疾患を持つ元軍人(=国のために奉仕した者)ということで3000ドルの手当を毎月政府から受け取っていたうえ、弁護士、医師としての報酬もありました。最初からこの手当が目当てで陸軍に入隊したのでしょう。とにかく金になることに関しては頭の切れる男、それがマーティンでした。

そしてミシェルさんと結婚してまもなく、20代前半で当座預金口座がらみの詐欺で180日間投獄されていましたが、仮出所した時には医学部に入学するために他人の書類を自分のもののように偽造して提出し、合格しました。マーティンは偽物の医師だったのです。

 

ソシオパスの最期

ミシェルさんが殺害された日からちょうど10年目を迎える日の2日前、マーティンはユタ州立刑務所で自殺しました。自分の犯した罪を悔いたからではなく、終身刑の判決に対する控訴が現実的に不可能になったことで、一生を刑務所で終えるくらいなら死んでしまおうと思ったのではないでしょうか。詐欺師マーティンは塀の外で詐欺を繰り返して簡単に大金を稼ぎ、ソウルメイト、ジプシーと贅沢な暮らしができなければ生きていても意味がなかった。きっと自らの手でその人生を終えるその時まで、自分のことしか考えていなかったことでしょう。

シリーズ2

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