誇り高き高級娼婦の焦らし方から学ぶ 勝負所で感情をコントロールすることの大切さ


私が「最も印象に残った焦らしのシーンを一つあげろ」と言われたらこの「娼婦ベロニカ」(Dangerous Beauty)の1シーンをあげます。
圧倒的に男性側が優位だった恋愛関係を逆転させたシーンとも言えます。



16世紀のベネチアに実在した高級娼婦のお話です。
身分が釣り合わないため貴族の青年マルコとの結婚がかなわなかったベロニカは、彼への愛を貫くために高級娼婦となって彼のそばにいる道を選びます。国王や貴族を相手にする高級娼婦となれば、身分こそ違うままであれ、彼らの世界に入り込むことができるからです。
若く美しいベロニカは高級娼婦となるべく磨かれて、洗練、教養を身に着けてゆくのです。そしてよくぞここまで垢抜けた!という高級娼婦ベロニカは、瞬く間に地位の高い男達の間で求められるようになり、当然ある日貴族のマルコとも再会します。

Alexandre Francois Xavier Sigalon - The Young Courtesan

(上の画像はベロニカとは関係ありません)

マルコは既に政略結婚済みでしたが、彼がまたベロニカに惚れなおしてしまったのは想像に難くないでしょう。そして彼女の心がまだ自分のものだと信じて疑わなかったマルコは、ベロニカに口づけしようとするのです。
この日の、この瞬間のために高級娼婦の道を選んだベロニカ。どれだけ口づけたかったことでしょう。だけど彼女は唇が触れ合う寸前ですっと彼の誘惑をかわしてしまうのです。そしてマルコに何か囁くのですが(セリフは忘れてしまいました)、この時の焦らし方が素晴らしいのです。魅惑的なのに愛らしくて。
「身分が違いすぎるから結婚できないってあなたに言われた時、私がどれだけ傷ついたかわかる?出自のように自分じゃどうにもできないことが理由で捨てられた私の気持ちなんて貴族のあなたにはわかるわけないわ!」
こんな気持ちに蓋をせずに、怒りとそして彼へのあきらめきれない恋心にまかせて熱い口づけを交わしていたら、もうそこでおしまいだったでしょう。だけど彼女はそこでぐっとこらえて、高級娼婦の美しさ、誇り高さと風格でマルコを骨抜きにしてしまうのです。
男と女の関係だけではなく、生きていると勝負所が必ずやってきます。そこで感情的になってすべてを台無しにしてしまうか、あるいはその感情に自分を支配されることなく、主導権を握ることができるか。
勝負所だけではありません。日頃から「あの時感情的になりすぎてあんなことを言わなければ今頃は・・・」と思うような場面はたくさんあるはずです。それが積み重なり、自分が思っているよりもずっと深い溝を掘ってしまうかもしれません。


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