「昭和って感じでいいよね」などと軽々しく言えなくなる一冊

ちょっとレトロな飲食店や喫茶店に入ると「昭和のまま時がとまったみたい・・・」とかいいたくなるじゃないですか。昭和っていうと古めかしくて、不便さがロマンチックで・・・っていうイメージがあるのかな。だけど昭和ってそんなにいい時代だったとは思えないと、この一冊を読んで思いました。

 

読んでいて「重い・・・・」と思った部分は理解に苦しんだ部分でもあるわけですが、やはり戦後に生まれて本当によかったと思いました。私も戦前に生まれていたら、こんな風に「天皇はえらくて自分は非力で・・・・」とか言いながら自害したのかなぁって考えたんだけど、どうなんだろう。もうこれって洗脳ですよね。

「永井のご両親様、先立つ不幸はお許しください。頼みがいのない娘とあきらめてください。井上が明朝出発します。私は軍人の妻としてこれ以上嬉しいことは御座いません。井上の身を護る為に私は逝きます」

「先立つ不幸をお許しください。お国のためにかげながらお祈りいたします。国家重大な際、皆様お国のためにお尽くしください」


「妹は戦争未亡人になった。この妹は姉の『手本』にならって夫のあとを追いたいと思ったが、親戚の人がそばにつききりで監視していて果たせなかったという」


「母上様、いよいよ最後の時が参りました。

大詔を奉戴致しまして天皇陛下のありがたき御言葉本当にもったいなくて身のおきどころもございません。でも私は最後までもっと頑張りたかったとそれのみです(中略)でも戦がこうなりましたのも私達人民の働きが、頑張りが足りなかったのです。それを思いますと私は軍人の妻としてどうして生きながらえていかれましょう。かねてより覚悟して参りました時が来たまでのことと思います」

昭和50年代生まれの私としては「あなたが死んでどうなる?」としか言えないのです。死んで何が解決するのか?腹切りってそんなに立派ですごいことだったのかと、今でも不思議に思います。
私の祖母は大正時代生まれでしたが、認知症がすすんで私の名前がすぐに口から出てこなくなっても、教育勅語は全部暗唱できました。そういうものを見ていて、昔の日本って北朝鮮(行ったことないけど)並みに息苦しかったんじゃないかと思いましたね。その時代に生まれ育っていたら、何の疑いもなく順応できていたのかもしれないけれど、私はやっぱり戦後に生まれて幸せだと思いました。


完本 昭和史のおんな

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