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マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

真性魔性の女(2)

福音

真性魔性の女(1) - マリア様はお見通しの続きです。

魔性の女の恐ろしさって、「気がついたら破滅させられていた」みたいなところです。本人は破滅させようだなんてまったく思っていなかったんだけど、映画「ダメージ」の場合、遊び相手に選んだ男がまずかった。

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【要注意】結末を含むネタバレあり

 

ずっと優等生として生きてきた男に「こんな気持ちになるのは初めてなんだ」と言わせたアナ

主人公で魔性の女アナが遊び相手に選んだのは、婚約者マーティンの父親、スティーブン。まだ医師だった頃に妻の名家出身のイングリッドと出会います。おそらく父親が政財界の有力者であると思われるこのイングリッドに見初められて結婚し、下院議員になって順風満帆の生活を送っていました。
そこに現れたアナは波風を立てようなどとはこれっぽっちも思っていないのです。「面白いおもちゃを見つけたわ」くらいなんじゃないかな。だけどおもちゃに選んだ相手がまずかった。だって真面目なんだもの。
「こんな気持ちになるのは初めてなんだ」
その気持ちは麻薬のような力があり、その気持ちに心を食い尽くされるような痛みさえも気持ちよく感じられたのでしょう。

アナへの気持ちに突き動かされて、今までとったこともないような行動に出るようになったスティーブン

ブリュッセルでの国際会議を控えたスティーブンはアナを同行するよう誘うのですが、「週末はマーティンと過ごすから無理」と断られてしまいます。その夜帰宅して、彼らが週末を過ごすのがパリと娘から聞いてしまい、さらに強い嫉妬にかられるスティーブン。そりゃそうですよね。
「パリに行ったらやることなんて一つでしょう」というおませな娘の言うとおり、パリはロマンチックな街。恋する二人がともに時を楽しむには最高の場所です。そんな場所でマーティンがアナを独り占めし、二人が美しい街並みをともに楽しむことを想像すると耐えられなかったことでしょう。そしてなんと、ブリュッセルでの会議が終わるとパリに直行してアナ達の宿泊しているホテルの近くに部屋を借りるのです。その部屋から見えた二人の様子に嫉妬して、心が焼かれる痛みに、小さな子供のようにベッドの上でもだえるスティーブン。挫折も情熱も知らなかった下院議員はこういうものに免疫がありませんから、これでまたアナへの執着が強くなっていくのです。

二人が乗った船が傾き始めた

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イングリッドと別れると言い出すスティーブンに焦るアナ。当然です。アナにしてみればスティーブンとの関係は情事という大人の遊びなのですからそこまでされたら困ります。

「じゃあ私と朝食も一緒に食べるような生活がしたいっていうの?!」

「ああ、いいんじゃないか!」

固まるアナ。

「マーティンが傷つくわ」

「彼は若いから立ち直れる」

「だけど彼を失うのよ。イングリッドとの生活はどうするの?いい暮らしじゃない。私と一緒になって何を得るのよ?」
「君だよ!」
「既に手に入っているものを求めてすべてを捨てるの?」

 
スティーブンと戯れているからといってマーティンへの愛情が減るわけではないアナ。アナがすべてになってしまっているスティーブン。
一方の気持ちが重くなりすぎたラブボートは沈み始めました。

悲劇、そして破滅

あと3か月くらいでスティーブンの情熱も冷めるだろうなと思いながらこの映画を見ていました。炎がいつまでも燃えさかってるわけありませんからね。だけど残念ながら、その前に二人の関係だけでなく、すべてが終わります。
携帯電話のない時代に作られた映画ですから、アナとスティーブンは思うように連絡がとれません。そこでアナが逢引き用に部屋を借りたのです。アナからもらった合鍵を持ってその部屋を訪れたスティーブン。嬉しさのあまり合鍵を指したままであることなどすっかり忘れて部屋に入り、アナと愛し合っていました。破滅への扉はこうして開かれたのです。

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「なんかこの女危ない」と思わせる女には必ず裏の顔がある

この作品のリマスター版「親子そろって惹かれるほどか?と思いながら見ると、テンションがどうしても下がります。第一、トップクラスの権力者の男に出会って「すぐ」に家庭を捨てさせる決意をさせるほどの魅力か?」というコメントありましたが、だからアナは魔性の女なんですよ!
誰から見ても美人なら親子丼も朝飯前でしょうけど、「この女のどこがそんなにいいの?」っていう女には「何かある」のです。
「アナは信用できないの」と最初から言っていたイングリッド。何もかもが破滅した時、やはり自分の勘は当たっていた、とはあんな形で確かめたくなかったことでしょう。
魅力や妖しさのミルフィーユみたいな女、アナ。
外交官だった父親についてヨーロッパやアフリカで暮らし、四度目の結婚生活を送る母親はアナいわく"いかにもフランス女”(デヴィ夫人を彷彿とさせる女優さんです)。アナの母親の衣着せぬ発言に、その場にいた全員が翻弄されますが、この母親に育てられたアナって・・・とまたマーティンやスティーブン、イングリッドまでもがアナの底なしの妖しさに引き込まれてしまうのです。
ミルフィーユの層を一枚ずつはがしていくような楽しみを、マーティンとスティーブンは知ってしまいました。そして一番下の層にたどり着いた時、すべてが終わりました。


この女、何かあるといえば、宮本輝氏の血の騒ぎを聴けというエッセイに書かれていた女性を思い出します(確かこのエッセイだったと思いますが違ったらすみません)。
ある企業の御曹司が婚約した女性なのですが、とにかくよくできた女性だったのです。だけど父親は「できすぎで怖い。何かある」とどうしても気になって、探偵を雇って素性を調べたのです。するとその女性は、御曹司と同時進行でうんと年上の既婚男性と不倫関係にあることが発覚しました。
もちろん結婚は破談になりましたが、私の想像ではこの女性はすぐに新しいカモを見つけて捕らえたと思いますよ。

 

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