マリア様はお見通し

普段は何も見えていないふりをしながら、善人面して静かに暮らしています

真性魔性の女(1)


真性を語る前に、似非の安っぽい魔性の女についての一例をあげてみますと、先日こんな話を聞きました。

「超魔性な子がいてぇー、その子、自分が気になってるA君っていう男の子に『すごく言いにくいんだけど・・・A君の彼女浮気してるらしいの・・・』っていってそのまま彼女から奪っちゃったんですよ」

これは魔性なんじゃなくてただ汚いだけなんじゃないか?とかそんな女にひっかかる男も男だし、お互いお似合いだなぁと思いながら話を聞いていました。
真性魔性の女は見るからに悪そうな雰囲気は出していないと思うんですよ。少なくとも「魔性の女です」と看板はでかでかと出していない。

普段はこのお花のようなたたずまいかもしれない。

http://www.flickr.com/photos/44869649@N06/5163969072

photo by guilherme-pavan

 

真性魔性の女が持っているもの それは "憂い"

山田詠美さんがエッセイで紹介されていたのをきっかけに知った映画「ダメージ」のヒロイン、アナ(ジュリエット・ビノシュが演じています)こそ私は魔性の女だと思います。

アマゾンでレビューを書きました

アナの恋人(後の婚約者)、マーティンがこういいました。

「なんか彼女って悲しそうだろ」

アナは自ら不幸自慢、苦労自慢しているわけでもないのに、なんだかこう陰があって、憂いを漂わせているのです。私はこの憂いこそ真性魔性の女が持っているものだと思うのです。
 
ただし真性魔性の女がもつ陰は周りの人間がふと感じるものであって、本人が「よく陰があるっていわれるの」と自己申告するものではないでしょう。そういう風に自分から言ってしまう人間は、光を浴びたいがために無理やり陰を作り出しているような気がします。

憂いのあるアナ この人ほんと空気読めない(笑)。

【要注意】ネタバレあり


主人公アナ(魔性の女)がボーイフレンドのマーティンの転職祝いを祝うためのディナーに招かれるシーンがあります。
マーティンの両親、そして一族の実力者である祖父に紹介するということは、真剣なおつきあいをしている証拠。親としては可愛い息子の本命の女性ですから、どんな人間なのだろうと気になるから当然色々質問します。

「あなたのご両親は?」


「父は・・・・(省略)。母は四番目の夫と一緒にPalm Beachで暮らしています」


四人目の夫。結婚・離婚をそこまで繰り返すということは、相当奔放というか人間的に何かあるんじゃないか、という母親像を思い浮かべさせますよね。そういう人に育てられた女性が息子のガールフレンド、と思われてしまうかもしれないということに、何の恐れもないアナ。
しかもこの映画の舞台はイギリスで、マーティンの父親スティーブン(アナに夢中になって狂わされる男)は国会議員です。ということはマーティンはいわば裕福で保守的な家柄の出身ということ。
それなのになんのてらいもなく「母は四人目の夫と・・・」と淡々と話すアナ。そこには上流階級に対する媚びもなければ計算もありません。

「一人っ子でいらっしゃるの?」

「兄がいました・・・私が15歳の時に自殺しました」

それ、今話すことか?空気読まないなぁ・・・
なんともいえない空気が流れる中で、近い将来自分の義理の娘になるであろう女性に対する厳しい目を見開いたまま、マーティンの母はさらに質問します。

「なぜ自殺したの・・・?」


ある種の悦楽が感じられる意地悪な目つきで、こう聞きます。それに対してたったひとこと"Love."と、顔色を変えずに答えるアナ。ミステリアスなアナにどんどん惹かれるスティーブン。
同じ日の夜、スティーブンはうまく妻のイングリッドに嘘をついて、アナの自宅を訪れます。そしてそのLoveに隠された悲劇をアナから聞いて、彼女の傷を知るのです。だけどその傷を癒すように優しく抱くどころか、乱暴に求めるスティーブン。

 

アナの母親の奔放さというかエキセントリックさは映画でも伝わってきますが、原作だとより詳細に描かれています。英語がわかる方は是非読んでみてください。映画も洗練されていますが、原作はもっと洗練されています。

原作 Damage (英語・Kindle版)

「やっていることはただのビッチ」と頭でわかっていても、追い求めてしまう危険な女

"Remember. Damaged people are dangerous. They can survive."
「覚えておいて。傷ついた人達は危ないのよ。生き延びるから」


そうアナに前もって言われていたのに、傷を負ってもそれを必死に隠すわけでもなく、かといって傷をちらつかせて同情を引こうともせず、流されるように生きるアナに惹かれてしまったスティーブン(マーティンの父親)。
スティーブンのオフィスに電話をしてきてアナが誘ったことから始まった情欲と悲劇ですが、自分の愛する息子の婚約者だというのに、導かれるようにしてその誘いにのってしまうのです。頭のどこかでは「自分の息子を裏切っているひどい女」とわかっていても、アナの魅力に逆らえない。
こんな風にかなりビッチだとわかっていても、スティーブンは妻のイングリッドと離婚するとまで言い出します。そしてアナはこういってなだめて離婚を思いとどまらせます。

「離婚しなくても、私ならもうあなたのものになっているじゃない」

マーティンとアナの婚約が決まり、絶望し取り乱すスティーブンにこんなことまで言う始末。

「あなたと一緒にいられるようにマーティンと結婚するのよ」


これは自分の息子に対する侮辱と同然なのに、二人が結婚しても自分がアナの人生に留まれることを知り、安堵して喜びを隠せないスティーブン。
マーティン可哀想だな・・・。だけどスティーブンの中の父親と男の一面が戦った結果、男の一面が勝ってしまったのです。息子よりも愛人を選んだ。
冷静に考えたらアナのやっていることは人の道からはずれているし、かなりビッチなのですが、もうそれすらわからなくなるほど盲目になっているスティーブン・・・・。

ジェレミー・アイアンズが演じる国会議員スティーブンの、英国紳士たるスーツ姿の美しさは一見の価値ありです。そのスティーブンが知性、教養、社会的地位、理性・・・すべてを忘れてアナに狂うシーンは、このスーツ姿がなければ演出できなかったでしょう。

ダメージ(DVD)

 

真性魔性の女 芸能人に例えるならばこの人

高岡早紀さん、といいたいところですが、蒼井優さんでしょう。なぜなら高岡早紀さんはぱっと見でもう何が武器なのかわかるじゃないですか。色っぽい顔立ちに大きな胸。ああ、そそるよなーって同性から見ても明らかです。

だけど岡田准一さんや大森南朋さんといったモテ男とおつきあいしていた蒼井優さんは、武器がなんなのかはっきりわかりません。美人ではないし、スタイルがよいわけでもない。じゃあ何を隠し持っているの?きっとそれが彼女のモテの秘密であり、魔性なんだろうと思います。

真性魔性の女(2) - マリア様はお見通しに続く

 

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