恋敵に回したら一番怖いのはこういうタイプの女



ペネロペ・クルス主演の「エレジー」という映画があります。恋敵に回したら一番怖いタイプの女性は、初老の大学教授が溺れてしまうほどの美しい肉体を持つ主人公ではありません。実はその女性は一度も映画に登場しません。台詞の中でその存在について軽くふれられる程度なのです。





ベン・キングスリーが演じている大学教授には医者の息子がいるのですが、子供の頃からあまり彼に愛情を示したことがないようで、教授はいまだに彼にどう接してよいのかわからず、ぎこちない親子関係でした。
そんな教授のところにある日息子が男としてのアドバイスを求めにやってくるのです。息子は結婚しているのに、なんと同僚の女性に恋をしてしまったというではありませんか。
「彼女には二人の子供もいるんだけど、こう、彼女と一緒にいると元気が出るんだ」

一緒にいると元気が出る・・・・。しかも子供が二人いても障害にならず、一緒にいたいと思うほどの女性。一度も映画に登場しない、息子の恋人という設定の女性こそが、恋敵にしたら一番怖いタイプだと思うのです。
若い看護士と夜誰もいなくなったオフィスのデスクの上でする火遊びならぱぁっと燃え上がって、すぐに消えてしまいます。だけど下半身ではなく心をつかまれてしまっている場合、妻から見たら手ごわい存在です。女性としてだけでなく、一人の人間としても素晴らしいと惚れこんでしまっている。
共有するものが肉体的な快楽だけなら、その快楽の頂点にのぼりつめた直後、燃え盛っていた火は消えるけれど、優しく温かな焚き火は、ぱちぱちと音を立てながらゆっくりと燃え続け、炎に照らされながら手をかざしているうちに、体の芯から温まって離れたくなくなる。
焚き火みたいな女は怖いですよ。

エレジー デラックス版 [DVD]:ペネロペ・クルスの容姿の美しさはもう言うまでもないのですが、教授の情事の相手役を演じたパトリシア・クラークソンがすごい。
体だけの割り切った関係を続けながら、実は慰められていたのは体ではなく心でした。男並みに稼いでいても時々寂しくなったり、虚しくなったりするキャリアウーマンの悲哀(エレジー)を切々と語るシーンが印象的でした。このシーンに限らず、登場人物達がつきつけられるエレジーは見ていてやはりせつなかったです。

ペネロペを夏に例えるとパトリシアは晩秋。パトリシアの白くて薄い皮膚に高そうな黒いランジェリー姿と、ペネロペの瑞々しい肉体の対比も目が離せませんでした。自分だっていつか晩秋を迎えるんだよなぁと思うと、ワインでも飲んで酔っ払って現実逃避したまま寝てしまおうかと思いましたが、そうやって寝て起きれば、結局昨日よりも確実に老いているわけです・・・・。晩秋を迎えた頃には、焚き火のような温かい女性になっていたいものです。

We're not getting any younger.....


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