広告代理店は、社員が一人自殺しても痛くもかゆくもない業界である

電通の女性新入社員が、過労が原因で追い詰められて自殺した事件が取り上げられているのを見ていて思い出しました。
私が昔働いていた企業に、Tさんという若い女の子がいました。Tさんはこの企業に入る前は大手広告代理店の白鵬堂(仮名)の関連会社で働いていました。
自殺した女性社員のように、100時間/月くらいの残業はあたりまえで、終電に間に合うなんてことはまずなかったけど、タクシー券は毎晩ちゃんと出て(東京→山梨かすってる?くらいの神奈川県の田舎でも出るんですよ・・・広告代理店って儲かっているんですねぇ)、給与も相当よかったのです。そして何より仕事が楽しかったんですって。
だけどただでさえ華奢なTさんの体重は減り続け、このままだとまずいと思っていたある日の朝。
Tさんは出社してまもなく、一本の電話を受けました。それは先輩社員が電車に飛び込んで自殺したという知らせでした。ショックと悲しみを必死でコントロールしながら、すぐに直属の上司にそのことを伝えると、上司から返ってきたのは「あ、そう」のたった一言でした。

「このことがきっかけで『自分はこうなる前に辞めよう』と思い、その日に退職を願い出ました」

「こうなる前」というのは、自殺してしまう前にというよりは、何かを失い、何かが麻痺し、部下が自殺しても「あ、そう」と言って終わりの人間になる前に、ということです。

すると直属の上司からはなんと言われたと思いますか?

「へえ、辞めるんだ。退職したらもうこの業界では二度と働けないよ。それでもいいの?」

と言われたそうです。
このまま広告代理店に勤めていれば、芸能人を中心とした著名人と会う機会にも恵まれるし、芸能界の裏事情だって表のように感じてしまうほど、刺激的な生活と高給が待っている。
うちの社名の入った名刺の威力を君はわかっていないの?と言われているのと同じようなものでした。だけどTさんの意思は固く、退職しました。ありとあらゆる魅力的なものとの接点のある生活から、それがない生活に戻ることにしたのです。
私や他の女性社員達とお酒を飲みながら、Tさんは「後悔していません。今、私は幸せです」といいました。強がりではないと誰もが納得させられる、不思議なひとことでした。
だけど彼女の同期がもしこの記事を読んだら、「けっ、脱落者が何言ってんの?」と嘲笑っておしまいなのでしょう。
ちなみに私の知人が電通で働いていますが、寝ないで働いていますよ。もちろん激務も理由の一つですが、合コンが多いから寝ている暇がないのです。合コンが終わってから会社に戻って働いたりしていますからね。既婚男性社員でも合コンしまくっています。