毒のぬけたキム・ヨナ選手はつまらない

 


バンクーバー五輪シーズンの彼女は乗りに乗っていたと思います。ジャンプを中心としたエレメンツの精度の高さ(磨かれ抜いた、という言葉がぴったりだった)、スピード、演技力。SPもFSも振付けられたプログラムなのだということを忘れてしまうほど、自分のものにしていました。バンクーバー五輪で勝つために積み重ねて来たことが着実に実を結び、開花し、そして才能爆発寸前まで来ていて、敵ながらあっぱれと思っていました。そして「勝ってやる!」という気迫を感じたのです。

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だけどバンクーバー五輪でゴールドメダリストになり、夢をかなえてしまい「目標はもうすべて達成したから、ソチ五輪は結果にこだわらずいい演技をして終えられればいいと思っている」と本人も言うように、最近のヨナ選手は欲がない。毒がない。 牙がぬけている。
バンクーバー五輪直後のトリノでの世界選手権直後に行われたメダリストのインタビューの時、隣の席に勝者の浅田選手が来るとわかっていながら彼女の席にどっかりと自分のバッグを置き、浅田選手がインタビューを受けている最中はその隣でつっまんなそうな顔をしてず~~っと携帯をいじっていたのはもう有名なエピソードです。(動画はあえて貼らないでおこう)
そういう「だって私は女王ヨナですから」といったビッチ臭もここ2シーズンほど消えてしまい、なんかつまらなくなってしまったんですよ。
民法だったかNHKだったか忘れてしまったのですが、彼女の特集が組まれたことがありました。その特集で、彼女の快進撃が始まってからも、勝者の真央ちゃんが中央に立ち、二位だった自分がその隣に立っておさまったジュニア時代の写真を自室のコルクボードからはずすことはない、と言っていたのが印象的でした。「あの頃の悔しさを忘れないように」と。
あの頃というのは、まだヨナ選手が友達と一緒に真央ちゃんをビッチ(よりもひどい言葉らしい)と呼んでいた、二人がジュニアだった頃。それから数年たって立場が逆転し、女王の風格すら出てきても、その王座の上にふんぞりかえることもなく努力することを忘れなかったヨナ選手がその写真を見上げた時の表情を見て、じめっとしたものを感じたのです。
陰と陽、ですね。ヨナ選手が陰、真央ちゃんが陽。でも最近はヨナ選手から毒がぬけたせいで、二人とも陽になっちゃってつまらない。コントラストがよかったのにね。

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