浅田真央選手がトリプルアクセルに依存せざるをえない理由



最近友達によく聞かれること。それは・・・

「ねえ、真央ちゃん大丈夫なの?」

ソチ五輪前の最後の競技会であった全日本選手権での結果、特にFSで入れた二本のトリプルアクセルがともに失敗に終わったことを受けての感想なのでしょう。

ルッツに苦手意識がある限り、トリプルアクセルに依存するしかない

TVで浅田選手がソチ五輪で勝つには・・・という特集があると、やはり「トリプルアクセルを決めることが条件だ」という声が聞かれます。
三回転ジャンプの中で最も難易度の高い3Aがなかなか決まらず、次に難易度の高い3Lzに苦手意識がある。このことが浅田選手を苦しめているのです。
多くの選手は、SP/FSで3Lz-3Tのコンボ、そして基礎点が1.1倍になるFS後半に単独(あるいはコンボ)の3Lzを入れます。3Aが飛べない(あるいは割に合わないジャンプであるため習得する気もない)彼女達にとっては、アクセルの次に難易度が高い=基礎点が高いこのジャンプを構成に入れるのはごく自然だからです。
浅田選手はルッツにいまだに苦手意識があるようで、トリプルアクセルしか得点源がありません。
ただし今のところ成功率で言うと武器(得点源)というよりは、諸刃の剣なのです。
「だったらいったい私は何で点数を稼げばいいの?」といいたくもなるでしょう。そこで3-3なんだけど、残念ながら浅田選手は構成にこの連続ジャンプをほとんど入れてきません。

3-3が飛べないわけではない。むしろばんばん飛んでいた

よくYouTubeで韓国人が「真央がアクセルを二本入れるのは、3-3とルッツが飛べないからだ」とコメントしているのを目にしますが、そういう妄言を見かける度に、浅田選手が 2008年のヨーテボリ世界選手権で、3アクセルでずっこけた後の精神的なショックを抑え込んで見事3F-3Tと3F-3Lo(←ヨナ選手はおろか、男子選手も避ける連続ジャンプ)を決めたの見てねーのかおまえら!と思います。


(カート・ブラウニング氏とトレイシー・ウィルソン氏の解説です)

浅田選手とキム選手の競技人生の明暗を分けたルール改定

この頃は踏み切りエッジ違反をとられつつも、ルッツだって飛んでいました。
だけどこの踏切エッジ判定の厳格化によって浅田選手の翼がもがれたように思います。
キム・ヨナ選手のようにきっちりとアウトサイドエッジで踏み切ってルッツを飛ぶ選手がトップで活躍するようになり、インサイドエッジで踏み切る選手が目立つようになってしまったのは仕方がありません。
また、難しいジャンプを正しく飛んでいる選手が正当な評価を受けることは、大切なことです。
でも私はこのルール改定が、キム選手と浅田選手の競技人生の明暗を分けたと思います。

割に合わないジャンプー3A、3F-3Lo

トリプルアクセルは、相当きれいに飛ぶか、羽生結弦選手のように難しいエントランスから入らないと、GOEで加点はもらえませんから、女子選手にとっては、割に合わないジャンプです。
3F-3Loも同様です。二つ目のジャンプがループというのは、一つ目のジャンプを着氷した足でそのまま飛び上がるという、ただでさえ難しいコンボなので、きれいに3回転回りきってもGOEで加点がもらえるところまでは到底いかないのです。
だけど勝負は抜きにして、一人のスケーターとしての美学を貫くために、浅田選手はこのジャンプ構成で行くことにしたのではないでしょうか。負けても愛される選手。
彼女がソチの表彰台の一番高いところに立つには、3-3は絶対に必要です。だけどもう時間がありません・・・・。なぜバンクーバー五輪が終わった直後に、認定されにくい3F-3Loではなく、3F-3Tの練習を再開しなかったのだろうと思うと、悔やまれます。



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