翼を取り戻した真央ちゃんはどこまで飛んでいくのでしょう


ノクターン・リローデッド!みたいになるんだろうな、と思っていたら、全然違いますね。
進化したとか、そういうプログラムではない。

7年前のスケートアメリカでのノクターン


7年前のノクターンは、真央ちゃんが滑ると五線譜に描かれている音符や休符、そしてその他のあらゆる符号がぽろぽろっと金平糖に変わりそうな、そんなプログラムでした。

今年のスケートアメリカでのノクターン

リンクの中央でポーズをとって音楽がなるのを待っている真央ちゃんがアップで映し出された時、ほんのりと薔薇色に染まった頬と、指でぽんぽんと色を乗せたような優しい色の唇を見て、今季のノクターンのテーマが初恋❤であることを思い出しました。
初恋は報われるのか、報われないのか、というものではなく、恋をしているという自覚症状もないままに戸惑ったり、舞い上がったりする少女を見ているようでした。特に最後のストレートラインステップシークエンスのところは、熱とか甘さとか、そういったものを混ぜ合わせてできた高揚感があるんですよね。7年前のノクターンとはまるで別物。甲乙つける必要なし。
今回の演技を見て、真央ちゃんはようやく翼を取り戻したのかな、と思いました。ジャンプの修正、本当に、本当にお疲れ様でした。
ルッツとフリップの踏切エッジ判定の厳格化で得をした選手は数少ないです。その選手達はお得意のアウトサイドエッジで他の選手達をぐりぐりっと踏みにじりながら空高く飛翔していったわけですが、きちんと正しいエッジで踏み切っていた選手がちゃんと評価されるようになっただけなので、まぁしょうがないでしょう。
ただこのルール改正で、真央ちゃんはプレ五輪~五輪シーズンはルッツをプログラムからはずさざるを得なくなりましたし、五輪後にとりかかった修正の辛さは、想像を絶するものです。一つのジャンプを修正することが他のジャンプにも影響を及ぼして、その結果頭と体がばらばらになってもうわけがわからない、というところまで来ていたというインタビュー記事を読んだ記憶があります。
そのシーズンは本当につらそうだったけど、実戦でどのくらい飛べるようになっているのかを試すために、転んでも転んでも、試合から逃げなかった彼女の強さをファンは知っています。
私だったらうまくできるようになるまで雲隠れしてリンクに籠りますね。それで「あ、飛べた♪」なんて言いながら、ご褒美にどらやき食べたりしそうですよ。だって「できない自分」を見られるのは、恥ずかしいし怖いじゃないですか。
だけど真央ちゃんは、恥をかくことを覚悟して、ジャンプを矯正しながら戦い続ける道を選びました。そして真央ちゃん本人が「やっと矯正の手ごたえが感じられるようになった」と言っている今シーズン、おもりがとれて、エッジでぐりぐりっとやられた翼の傷が癒えた今、彼女はどこまでも高く飛んでいけるような気がします。闇の暗さを知っている彼女だからこそ、晴れ渡る空のまぶしさと美しさは格別でしょう。