声援が凶器になる時


伊達公子選手が試合中に発した「シャラ~ップ!」と「ため息ばっかり!」という言葉がニュースになっていたので動画を見たのですが、感想としては、一人のため息は小さくても、それが大勢になるとあんな風に聞こえてしまうものなのだ、という驚きです。
テニスは体力の消耗が激しいスポーツですし、伊達選手の年齢になれば体力的な厳しさはさらに大きなものになります。そしてもう後は精神力しか残っていない、というところまで絞られて、その精神をずたずたに切り裂いたのが、束になったため息。

http://www.flickr.com/photos/23101706@N00/2580313928

photo by Cane Kong


彼女を応援していればこそのため息なんだけど、ダブルフォールトの後で選手本人が自分自身に苛立っている時にあれを聞いたら、さすがにつらいでしょう。そこをぐっと堪えるのがトップクラスの選手の証だとしても、あれはきつい。
Wiiでテニスゲームをやっていて、自分が操作している選手がミスったらため息をつこうがsh*t!と言おうがかまわないけど、実際の試合を見に行ったら、テニスコートに立って戦う生身の心ある人間に敬意を払わなくてはいけません。 以前プロゴルファーの宮里藍選手と首位争い(だったと思う)をしていた韓国人選手がパットをはずした時だと思うのですが、ギャラリーから拍手が起こったそうです。宮里選手を応援していた人達が拍手したのだと思いますが、なんといってもみっともないし、韓国人の選手の心をえぐったはずです。
もしかするとこの選手はそのみっともない人達を鼻で笑い飛ばせる強さを持っていた選手かもしれませんけどね。 この恥ずかしい拍手が今回のため息と同じと言っているのではありません。二つの事例はまったく違うものですが、「応援しているからこそ」と言えば、なんでも許されるのかということです。伊達選手のシャラップもどうかと思うけど、金を出して観にきてるんだから好きなようにみさせろ、というのは美しくない。